パーキンスブレイラー

 1台13万円もするアメリカ製のとても頑丈な点字タイプライターです。重くて持ち運びには不便ですが、この利点は何と言っても下から上に向かって点が打ち出されるので、点字を読む側の凸面と同じ点のが出て、書いた点字がすぐに読んで確認できることです。また、6つの点の1マスが同時に打てることで時間短縮にもなります。初期の導入にはなくてはならない教具です。

 ライトブレーラー


 安価で手に入る日本製の点字タイプライターで、両面書きができる利点があるのですが、今ではほとんど使われていません。なぜなら、高価だけど読むのと同じ点の位置で指を動かせばいいパーキンスブレーラーが登場してきたからです。
 このライトブレーラーは点字盤と同じく上から下に点が打ち出されるので、左右逆転した指使いをしなければならず、しかも、@の点が小指というややこしいものなのです。また、打った点字を確認するのに、点字器本体部分をガチャッとはずして持ち上げて裏面を確認しなければならない面倒なこともあります。
 十数年前までは、点訳ボランティアさんはこれを使って点訳してくださっていました。コンピュータ点訳が盛んになった現在ではほとんど使われなくなりました。
 このライトブレーラーは、通称「カニタイプ」と呼ばれています。それは点字を打っていくに従って、本体がカニの横歩きのように左に動いていくからで、ちょっとおもしろい動きをします。

 点字盤


 昔からあった点字を書く道具の代表的なものです。点字使用者にとってのノートで、タイプライターよりは持ち運びにとても便利なので、点字がある程度上達した段階でこの点字盤を使う練習をします。点字盤に点字用紙をセットし、点字を書く部分の定規を紙にはさみ、一点ずつ右から打っていきます。行替えはこの定規を下にずらしていきます。でも、この点字は上から下に点筆で打っていくので下向きに点が出ます。つまり、読むときとは左右逆転して点字を打っていかなくてはいけないし、一点一点点筆で探りながら打っていく作業には相当な訓練が必要なことがおわかりでしょう。

 小型点字器各種

 片面書きの点字盤で、メモ帳代わりとして使うのには大変便利な道具です。いろいろな行数サイズがあり、目的によって選択できます。中でも、はがき用の点字器は縦横どちらの書き方もできて便利です。最近はカラフルなものも登場し、点字を体験してみたい人にはこのサイズがいいと思います。

 点字製版機(手動式)本体

 点字プリンターがなかった時代、つまり10年ほど前までは、点字を大量印刷するときに使われていた機械です。個室にこもり、機織りの「鶴」の気分で打っていました。
 亜鉛板や塩ビ板を二つ折りにしてはさみ、手の指使いはパーキンスを打つ要領で、足を同時に動かして打っていきます。
 行替えは、両手でカチッカチッと歯車を2回引き上げて打っていきます。両面書きができ、裏面は板をひっくり返してセットし、表面と1行ずらして打っていきます。 
 <苦労話>
 ・とにかく間違えたら大変!横にあるトンカチで点をつぶすしかないのです。
 ・亜鉛板や塩ビ板を二つ折りにするのも大変。折れ目をビンなどでしっかりとつけます。
 ・足を同時に動かさなくてはいけないので、腹筋を使います。妊婦の時は大変でした。
 ・慎重さと手間のかかる仕事なので、これを使うのは、何十枚も印刷するときです。
  数部ならパーキンスで打った方が早いと、何枚も同じものを打って肩こりになりました。

 点字製版機 付属品

校正器
 亜鉛板や塩ビ板で打った点字を間違えると大変でした。直す道具は鉄板と鉄の棒とトンカチだけです。
間違えた点字を打ち込んで、平らにするしかないのです。ですから、打つときは慎重に慎重にやりました。
ローラー  製版機で作った点字の原版に点字用紙をはさみ、ローラーに通します。あとは、紙を抜いて、またはさみ、ローラーに・・・・と、ひたすら単純作業を繰り返すのみです。

 点字プリンター

 点字プリンターとして、現在一番多く使われているのがこのESA721プリンターです。
連続した点字用紙を入れる大きな箱、何度打っても大丈夫な頑丈な打ち出し部分、そして、打ち出すときの大きな音、これらの点字印刷の特性をクリアーしてくれる商品開発はなかなか難しい。点字を印刷するとは機械でも力仕事なのです。
 このような点字プリンターが登場してくれたおかげで、今まで手作業だった点訳の世界に革命が起きました。コンピュータでのデータ化、複数部数あるいは大量印刷が可能になり、一気に作業が楽になりました。1枚ずつ点訳していた20年前には考えられなかったことです。

 立体コピー機

 熱処理による発泡インクの開発で、一躍市場に躍り出た機械です。
書きたい図を普通の紙にサラサラッとペンで書くのは普通の作業と全く同じ。それを特殊加工された紙にコピーします。このコピーのカーボンが「立体コピー機」(加熱する機械)に通すと特殊インクと反応して浮き出て、触ってもわかるようになるという仕組みです。ただし、その説明書きは点字で書かなければいけないのは当然ですよね。
  <苦労話とサーモフォームという機械の話>
 点字教科書に時々茶色の図の用紙が挿入されていますよね。あれは、サーモフォームという大型の機械で作られたものです。(本校にもありましたが、廃棄されてしまったようです。)このサーモフォームでは原版を作るのにすごい労力を要しました。いろいろな材料を使って凸面の立体原版を作るのです。それに特殊ビニール加工した紙を上から当て熱処理をすると原版の凹凸がそのまま出てくるというものでした。教科書のように何百もの枚数を作るのならいいのですが、生徒1,2名のためにそんな原版は作れるものではありません。原版を作ったらそれを直接見せた方がいいに決まっている。ということで、このサーモフォームという機械はほとんど使われることなく、いつの間にか姿が消えていました。
 そこで登場したのが、この立体コピー機でした。弱視の生徒にはペンで書いた図をそのまま見せ、全盲の生徒にはこのコピー機にかければいいだけなのですから、先生たちの手間が激減したことは言うまでもありません。でも、長い年限の保存がきかないのが難点です。
 先生方、ぜひ手作りの図をどんどん作ってあげてください。
(触図は見た通りに書くのではなく、それなりの配慮が必要ですが。)

 点字教科書

 普通学校で使用している教科書が国の予算で点訳されています(ただし、一種類だけの出版ですが)。つまりみなさんと同じような教科書を使って学習しているわけです。教科書の図やグラフ・表などは工夫されて同じように載っていますし、写真などはカットされますが、大事な写真は説明文に変えて載っています。
 しかし、1学年で使用する教科書は何冊にもなり、とてもかさばります。
 小学校で使う国語辞典は50巻にもなり、中学校で使う英和辞典は100巻にもなります。

 感光器

 感光器の先端部分のセンサーに入る光の量で音の高低ができます。つまり、明るければ高い音、暗ければ低い音になります。
 この原理を利用して、水溶液の透明度のちがい(にごり方のちがい)、沈殿物の有無、試験管に入った水の量(水面で光が屈折するので光の量のちがいができ、音が一瞬変わる)などを調べることができます。また、ヨウ素反応の青紫色など化学変化した色を明暗で推測することができます。理科の実験には欠かせない器具です。
 他の使い道としては、野外に出たときの木の高さや葉の茂り具合など、手の届かない範囲の状況も明るさの様子で調べることもできます。
 最近では、光の波長で色の種類がわかる器具も開発されています。

 盲人用温度計、盲人用電流計・電圧計

 デジタルで表示される測定値を音響式で読みとれるようにした器具です。そろばんのような1玉と5玉と小数点を3種類の音のちがいで区別しています。
 1・・・普通のピッという音。この音の数で4まで数えられます。
 5・・・1の音よりはちょっと高い音。この音が2個続くと0です。
 小数点・・・一番高くて短い音。
 現代の科学技術なら、このようなデジタル式の計測機器なら簡単に音声化されるのですが、なぜこれらの機器が音の高低だけの音響式なのでしょうか。それは、発売部数があまりにも少ないからなのです。このような機器は全国の盲学校ぐらいしか需要がありません。つまり生産ラインにのりきれない製品なのです。ですから、音声化するまで企業が開発努力してくれないのです。これらの機器はある企業がボランティア的に製作してくださっているものなのです。

 盲人用方位磁針

 ふたをした状態で、中では方位磁針がクルクルと方向を探っています。しばらくそのままにして方向を確定したあとに、ふたを開けます。すると、文字盤が上に固定されて、手で触っても読めるようになっています。矢印が北方向です。

 盲人用そろばん

 点字使用者は計算をするのに大変苦労します。ノートを縦に使っての筆算はできません。(点字は横1列に書くからです。)ですから、暗算を徹底的に訓練します。でも、数が大きくなったり、かけ算・わり算は暗算ではでききれません。そこで、そろばんを使っての計算を小学生の時から練習します。
 この盲人用そろばんは、手で触って玉の位置を確認しますが、簡単に玉が動かない仕組みになっています。やっぱり日本人はそろばんができないとダメですね。
でも、最近の電卓の登場でだんだん影をひそめましたが、やはり、計算のしくみや考え方を身に付けるためには、電卓ばかり頼っているわけにはいきません。ですから、盲学校ではそろばん教育が非常に重要なのです。

 レーズライター

 シリコンマットの上に、特殊なセロハン紙を置き、ボールペンで書くとひっかいたようになって、書いた線が手で触って確認できるようになります。これで簡単な絵や図を書いて、学習の手助けをしたりできます。また、マス目を入れることで、グラフ用紙として活用したり、漢字を練習したりできます。

 定規・メジャー・コンパス

 これらの測定器具は、目盛りのところを触ってわかるようにしただけのものですが、これで十分に活用できます。コンパスは半径の長さを棒の穴で決め、中心をピンで刺し、ペンで円周を書いていくという単純な道具もあります。どんな道具も、単純構造で位置がずれにくく、手で確認できるものが使いやすいのです。

 音声電卓・音声時計

 最近はデジタル表示を音声で読み上げてくれるものが大変多くなって、とても便利になりました。
 時計なども音声で読み上げてくれるものの登場で、使いやすくなりました。

 盲人用時計

 昔ながらのアナログの文字盤の時計もあり、それは盲人用としてふたが開閉できて文字盤をさわれるようになっています。

 台ばかり

台ばかりなどは針が直接触れるように、ふたがありません。
目盛りには点がついています(点字ではありません)。

 しょうゆ差し

 しょうゆをかけるという動作では、どれくらいかけたのか確認できません。そこでふたにちょっと工夫をすれば迷わずできます。
 このしょうゆ差しは、傾けただけではしょうゆは出ません。ふたに空洞部分があってそこを押すと一定量のしょうゆが出るしくみになっています。

 裁縫用の針

 視覚障害者でも裁縫はできます。簡単な縫う作業は生活に必要なものです。縫う場所にテープを貼ってみたり、しつけをしてみたり、それなりの工夫ができれば針仕事もミシンもできるようになります。
 でも、針の糸通しだけは難しいです。ですから、このような先端に糸の通るすき間を作ったものが「セルフ針」として売られています。糸を針の先端に置き、ピーンと糸を張った状態で下に押し込めば、針に糸を通すことができます。
お年寄りの方にもいいですね。