視覚障害者について伝えたいこと

横浜市立盲学校の小学部4年生の児童4人が、一般小学校のお友達に向けて、
自分たちの様子を知ってもらいたいと書きました。一般校からの疑問や質問に
応えられる内容だと思います。
視覚に障害のある子供たちの様子を、どうぞご理解ください。
                                    
 私たちは、盲学校の小学部の4年生です。国語の教科書で「手と心で読む」を学習して、視覚障害者が生活や学習で、どのようなことが不自由であるか、それに対してどのような工夫をしているか、みなさんに伝えたいと思ってこの文章を書きました。目の不自由な人はみなさんから見たら、ほとんど生活ができないと思っているでしょう。 しかし、目が不自由でもいろんなことを工夫しながら生活や学習をしています。
 
 では、全盲者の生活で不自由なことをあげてみます。
 ・見えないのでだれかがわからない。
 ・文字や絵などが見えない。
 ・テレビや映画でうつっているものがわからない。
 ・時計の文字盤が読めない。
 ・歩くときまわりの様子がわからない。
 ・広い場所で方向がわからない。
 ・食事のとき何がどこにあるかわからない。
 ・同じ形や大きさのものの区別がしにくい。
 
 次に、弱視者の生活で不自由なことを上げてみます。
 ・小さな字やものが見えにくい。
 ・遠くのものが見えにくい。
 ・暗くて見えにくい人や明るくても見えにくい人がいる。
 ・階段の段差が見えにくい。
 ・見える範囲がせまい人は左右を何回も確認しなければならない。
 
 その他にももっとあると思いますが 、次は、気をつけていることや工夫していることについてあげてみます。
(全盲)
 ・相手が誰かは、声を聞いて判断しています。初めて会った人は、名前を言ってもらうと覚えられます。
 ・外を歩くときは、白杖を持って確認をして注意しながら歩きます。 また、頭の中に地図を作って歩きます。
 ・まわりの状況をつかむために、 音やにおいを意識して行動します。
 ・初めて行った場所や初めてのものを使うときは、場所の説明をしてもらったり、 物の使い方をよく聞きます。そして、さわって確認し、周りの様子をつかもうと努力しています。
 ・ラジカセなどの機械の操作は、操作の仕方を覚えておき、目印になるものをつけておきます。
 ・部屋の中は、いつも整理整頓しておき、どこに何があるかを覚えておきます。
 ・音声の出る道具を使います。 
(弱視)
 ・小さなものや字を見るときは、 レンズや拡大読書器などを使います。
 ・遠くのものを見るときは、ピントが調節できる単眼鏡を使います。
 ・照明器具を有効に使っています。
 ・階段のへりなどに色違いのテープを貼ったりします。
 
 次に、学習で工夫していることを教科ごとにまとめてみました。
 <国語>
 全盲の人は点字で読み書きをします。点字を書くときは、点字タイプライターや点字板を使って書き、教科書は、点字教科書を使っています。普通の文字を書くときは、レーズライターという字の浮き出る用紙を使います。
 弱視の人は、字の大きい拡大教科書を使っていて、書くときは、ノートの行の幅が広くて線の太いものを使い、鉛筆は濃くて太いものを使います。
 弱視の人が読み書きをするときは、前かがみにならないように傾斜机を使います。
 <算数>
 筆算はできないので、盲人用そろばんを使って計算します。
 図形を書くときは、さわってわかる分度器・定規・コンパスなどでレーズライターに書きます。また、点字で書いてある点図もあります。
 重さを量るときは、さわってわかるはかりや音声の出るはかりを使います。
 <社会> 
 地図は、立体的なさわれるものを使います。
 <理科>
 光や温度を音に変えてくれる、便利な器具を使って実験をしています。
 <音楽>
 点字の楽譜もあります。
 楽器は、どこをさわればどんな音が出るかを覚えておきます。
 <図工> 
 ICテープやレーズライターなどで、線が浮き出る絵や模様を書いています。
 さわってわかる立体的な作品を作ります。
 <体育>
 走るときは、音の出ている方向に走る音源走や、ロープを伝って走る鉄線走や、ロープを使ったり手をつないで介助者と走ったりします。
 球技は、盲人バレーボールや盲人卓球など、音の出るボールを使い、そして、地面を転がすルールでゲームをしています。
 とび箱は、助走をつけずにそのままとびます。

 ところで、みなさんは、視覚障害者の人たちの生活について、前に書いた以外のことでも、疑問に思ったことはありませんか。私たちは、トイレや風呂は一人では入れますか?とか、食事は自分で食べられますか?などということをよく聞かれます。そんなみなさんからの質問にお答えします。
 食事は、テーブルに何がどこにあるかを説明してもらえれば、自分で食べることができます。
 着替えは、上はラベルを後ろにくるように着て、下はポケットやチャックを前にして目印になるものを確認して着ます。。
 家の風呂やトイレは慣れていますが、初めて行くところはていねいに教えてもらったり、手でさわって確認をします。
 お金の区別では、コインは、厚さや大きさ、まわりについているギザギザや穴などで判断します。お札は、隅にある丸い印とお札の長さをさわって確認できます。
 調理は少しむずかしいですが、挑戦しています。
 手でちゃんと大きさを確認しながら材料を切ります。
 皮むきなどは、皮がむけているところとむけていないところを確認しながら、むいていきます。また、ニンジンのような細長い野菜は、ゆっくり回しながら上の方から皮をむいて、下の皮が残ったらちゃんと確認してむくようにしています。 
 お米とぎは、水を流したときにお米が一緒に流れないように、ざるを使って洗います。
 今まで紹介してきたことは、学習面や生活面で、何が不自由であり、それをどのように工夫をしているかを説明してきました。このように私たちは、少し手助けをしてもらえれば、一人でできることがたくさんあります。
 
 この発表を通して私たちが伝えたいことは、私たちの目が不自由なので、何でも手助けをしなければ、生活ができないと思っているでしょうが、ちょっとの手助けで、できることがたくさんあります。できることは自分でやりますので、何か困ったことがあったら、声をかけますので、そのときは手助けをしてください。 私たちが障害のない人と、どうして交流をしたいのかというと、みなさんと仲良くなりたいし、遊んでみたいし、盲学校では経験できない生活を一緒にしてみたいからです。
 
横浜市立盲学校 小学部4年    
しょうた、けいた、たかひろ、かんな
 
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