日本点字事情
かわら版

横浜市立盲学校
点字研究部

文責 道村静江
1998年12月2日発行 NO.9

          <前号の続きです>

 3.図形記号における大文字の表記について。
 現在の体系では、図形記号において二文字以上の連続する大文字列を表記する場合、次の二通りがある。
  a.各大文字に大文字符を前置する。
  b.大文字列の最初の大文字のみに大文字符を前置する。
 しかし、a.の方法は活字とは対応するものの、点字の表現としては冗長になり、読みやすさ、書きやすさが犠牲になること、b.の方法は、活字との対応が明確でない、などの問題がある。
       ⇒だから、「かわら版」7号の14.の2.(3)になる。
  (例)
    直方体ABCD−EFGH

     a.の方法   

     b.の方法   

 4.分数の構造がわかりにくい。
 現在の体系で分数を表す場合、(分子)(分子分母の区切り線)(分母)の順に表しているが、分子や分母の形が複雑になったり、分数の前後に文字や数式がつく場合などでは、式の形がわかりにくく、式全体の構造を理解するまでに多くの時間を必要としている。
       ⇒だから、「かわら版」7号の14.の2.(5)になる。
  (例)
              

 5.単位の表記について
 現在の体系では、単位を表すラテン文字またはギリシャ文字に前置する外字符は、下付添え字に前置する符号と同じである。この両者を区別するために、文字に続けて単位を書く場合には、単位をカッコでくくって下付添え字と区別しているが、このカッコが数式中の中カッコと同じであるため、式中にカッコが入ると形の上では区別がつけにくかった。また、数字に続く単位は、下付添え字と解釈されることはあり得ないとの判断から、数字の後に続けて、外字符、単位のラテン文字またはギリシャ文字の順に書いているが、例のように、「重力加速度を表すg」と「グラム」など、変数・定数と単位の区別がつきにくい場合があり、また長い複合単位の途中に行移しがある場合など、どこまでが一続きの単位であるかがわかりにくいという問題がある。
       ⇒だから、「かわら版」7号の14.の2.(6)になる。

   (例)  気体定数  0.082[atm・l/mol・K]
   

 6.カッコについて
現在使われているカッコの中には、角カッコと亀甲カッコのように墨字でもその意味上の違いが明確でないものがある。また、点字の中カッコは、「開き」と「閉じ」の区別がないため、どの部分がカッコにくくられているのか理解しにくい場合がある。
       ⇒だから、「かわら版」7号の14.の2.(7)になる。

   (例) {1,2,3}={1,2}∪{2,3}      

                     

  (連絡)日点委から配布された資料は道村が保管しています。

 17.やっとこのシリーズを終わりにします。
 とても、とても長かった、この「点字科学記号の改訂に向けての動き」のシリーズはひとまずおしまいにしたいと思うのです。なんだか難しすぎて、ほとほと読むのがいやになられたのではと思います。もう少し気軽に読んでもらえたらと思って発行した「かわら版」でしたのに、取り上げた話題がとにかく難しすぎた。でも、これは避けては通れない重要なことで、難しいながらもお知らせする意義はあったかなと思います。ひとまず義務は果たしたということで、この話題が一段落して、やっと年が越せるという気分です。
 次回からは、もっと身近な点字の話題を取り上げたいと思います。まだまだ校内的に共通認識しておかなければならないこともたくさんありそうなので、どうか継続してお読み下さい。では、年明けにまたお会いしましょう!よいお年を!