日本点字事情
かわら版

横浜市立盲学校
点字研究部

文責 道村静江

2006年4月26日発行 NO.66

 新年度がスタートしました。新体制には慣れましたか?新転任の先生方も少しは様子が分かってきたのではないでしょうか。
 この「かわら版」は1998年から発行を続け、途中2年間とぎれましたが、昨年度から新たなシリーズで書き始めました。昨年度は、主に点訳に関する知識を特集しましたが、今年度はその他の情報もお知らせしたいと思います。もちろん、今年も月1回の「点字研修会」を開催します。その内容は、もう一度点訳のきまりをていねいに解説し、点訳の自信をつけてもらいたいと思います。かわら版47号〜65号を使います。
 どうかまた1年間、ご愛読ください。そして、みなさんの点字に関する知識がより豊富になることを願っています。

 さて、今号はまず導入として、点字に関する本や道具の紹介をしたいと思います。全ては紹介でききれませんが、特徴のあるものだけを取り上げます。斡旋も合わせて行いますので、ご利用ください。
《点訳のための手引き書》
 @「点字表記辞典(改訂新版)」
 点字の表記には最もややこしい「分かち書き」というのがあります。どんなに文法を駆使してきまりを作っても例外はつきものです。ですから、ちょっと分かち書きで迷ったときに調べる辞典としては、点訳作業のそばにあると便利でしょう。でも、基本はあくまでもきまりを理解することですが。
 A「点訳便利帳2005年版」
 黄色い表紙の点訳便利帳2003年版をお持ちだと思いますが、あれは、本校点字研究部の23年の歴史ある冊子です。今では全国から注文が相次ぎ、4000部を超える数が普及し、盲学校関係者だけでなく全国の点訳ボランティアの方々に喜ばれています。この本の特徴は、点訳のきまりを現場に基づいて使いやすい用例がたくさん載っていること、数学・理科・英語・情報・楽譜などの専門分野の基礎編が手っ取り早く紹介されていること、第2編に指導のための様々なことが盛り込まれていることです。もう使われてその内容の充実は実感していただいていると思いますが、残念なことに黄色い冊子はとても誤植が多いことです。それらを一気に解消した「2005年版」を発行しています。家にも1冊あった方がよくありませんか?
 B点字学習指導の手引き(平成15年改訂版)
 点字導入のためだけでなく、それ以前の手指運動、形の弁別、触察技能、図形の構成や分解、空間位置の把握など、幼稚部や重複障害の個別指導に役立つ内容がいっぱいです。1章〜3章まですごく使えます。
 C点字導入学習プログラム
 単一障害児のための点字導入プログラムです。Bの手引きの内容を独自に編集したもので、各頁にはUV点字で墨字が併記され、それをどのように指導したらよいのかを詳しく解説してあります。点字導入対象児を受け持つ人はぜひ活用してほしいと思います。今年の点字研究部はこの指導法の習得を目指します。

《点字を書くための道具》
 D点字タイプライター
(これは買えません)
 本校で使われているタイプライターは、「パーキンスブレーラー普通型」でアメリカ製です。輸入物で現在は12万5千円もします。大事に使いましょう。とても頑丈にできていて壊れにくいのですが、持ち運びにはとても不便です。
去年からたくさんの先生方に使っていただいて、大変うれしいです。
 E点字盤
 点字の導入期が終わると、持ち運びに便利な点字盤が使われます。凹面打ちなので読むときとは逆の書き方を学ばなければいけません。点筆で打つ操作も容易ではなく、相当の練習が必要となります。一般の職員はたぶんこれでは打てないでしょう。パーキンスやコンピュータの凸面書きに慣れているせいで鏡文字になってしまうからです。でも、生徒にとってはこの点字盤の操作は必要不可欠のものとなってきます。職員はうまく打てなくても、指導法はしっかりと学びましょう。その使い方は「点訳便利帳」の第2編に特集してあります。
 F小型点字器
 コンパクトな数行分のもので、盤全体が点筆の受け皿になっていて、押さえる枠は点字のマスになっています。片面打ちしかできません。メモ程度の筆記によく使われます。職員は家で葉書を書くときなどにあると便利でしょう。盲学校を離れると書く道具がないので、こういうのを一つ持っていると一生点字と関わっていけるものと思います。ハガキ専用点字器というのもあってハガキの大きさに縦書き・横書きと工夫されているものもあります。
 また、これらの道具には点筆が付き物で、セットで売られています。点筆にもいろいろな種類があり、点字盤には丸型の点筆がついていて、小型点字器には収納にかさばらない平型の点筆がついています。通常は丸型のものが握りやすく、長時間使用しても疲れにくいので、ほとんどの点字使用者がこれを使用しています。
 F校正器(1点打ち)
 これはあると便利。パーキンスで打ち終えたものを見直したときに、「アレー間違えた!」というときにポツッと1点ずつ打って直せるからです。もっとも最近ではこの間違えるのが怖くて、短い文章を1部打つのにもコンピュータが使われます。もっと職員室でパーキンスの音がしてほしいものです。パーキンスの点字のマス間は点字盤よりもコンピュータよりも大きく、点字そのものが大きく感じられ読みやすいということを知っておいてほしいです。
 G点消棒(パーキンス製)
これもあると便利です。パーキンスで打っているとかなりの頻度で打ち間違いをします。間違いにすぐ気づいて鉄のバーのあるところで大体の人が爪の先でつぶしています。でも、このつぶすという作業は、本当はもっと細心の注意を払って行わなければならないものなのです。爪の先でつぶすにしても、平らになるように十分注意してください。些細なでこぼこでも読む側には敏感に感じとれるものなのです。ましてや打ち終えた後に、「アッ、この1点が不用だった!」というときには、爪では周囲の点もつぶれてしまいます。ペンの先ではきれいに平らにはなりません。そんなときにこの点消棒が活躍します。
 H墨点字プレート
 立体コピーをするときには必要不可欠のものです。透明のプラスチック板に点字の大きさの穴がズラーッとあいているもので、ペンでその穴に黒丸を書いていきます。視覚的に点字が表現できて、立体コピーにかけるとその黒丸が浮き出るので、点字としても読めます。これは本校開発の道具です。横浜の小さな工場が利益なしの好意で作ってくださいました。これは全国の点訳関係者には絶対に必要なものだと痛感し、交渉の結果日点で取り扱ってくれるようになりました。