日本点字事情
かわら版

横浜市立盲学校
点字研究部

文責 道村静江
2006年3月20日発行 NO.64
       自動点訳ソフトを使ってみましょうか

 1.自動点訳とは?
 PCで作成した墨字データを、テキストファイル形式で保存して、自動点訳ソフトにかけると、あっという間に点訳データが作られます。
 この自動点訳ソフトが出た時には、コンピュータがこんなことまでやってくれるのかと驚きました。そして、賢いなあと思うと同時に、変な間違いをして、やはり機械だなあとおもしろがってもいました。しかし、それを何の迷いもなく自動点訳にかけただけで点訳した気分になって出力してしまう人が多くなり、この存在がだんだん腹立たしくなってきたものです。
 このソフトが出だした当時は、語句の読み間違いや分かち書きの精度も悪くて、修正するのが大変でした。むしろ自分で点訳した方が速いくらいでした。でも、だんだん変換精度も向上し、今では分かち書きに関してはかなりよくなっています。2001年に点字表記が改訂され、「する」などの表記もバージョンアップして対応してくれ、長文を点訳する時などには、便利です。ですから、使えばいいと思います。ただし、間違いがたくさんあります。そこには確かな点訳の知識がないと修正できません。どうか、修正をすることを忘れないでください。

2.自動点訳ソフトの種類
 @EXTRA(エキストラ)
 音声対応がよくできていて、全盲の人にとっては使いやすいソフトです。ただし、有料で高価です。理療科の先生が主に使っています。
 AIbukiTen Pro(イブキテン プロ)
 富士通中部システムがフリーソフトとして提供していました。しかし、現在は公開を中止していて、もうダウンロードできない状態です。とても使いやすいソフトでした。でも、ご心配なく!元々は、岐阜大学工学部応用情報学科池田研究室が研究・開発した点訳エンジンを使用して製品化されたもので、池田研究室でほとんど同様のものが提供され、サポートもできていて、これからも改良を加え対応してくれるはずです。
 BIBUKI-TEN(イブキテン)
 岐阜大学工学部応用情報学科池田研究室がフリーで公開してくれ、自由にダウンロードできます。ただし、ダウンロードの際に、名前とメールアドレスを申告する必要があります。これは、どのような方に使っていただいているのかを把握するためでしょう。 IbukiTen Proに劣らず良いソフトです。ダウンロードしてみてください。PCの環境によってMeまでか、XPかを選んでダウンロードできます。ダウンロードのページは、http://www.ikd.info.gifu-u.ac.jp/IBUKI-TEN/

3.自動点訳にかける前に処理しておくべきこと
 (1)墨字データを、テキスト形式で保存しておく
 
このやり方はもう誰でもご存知ですよね。一太郎やWordのワープロ上で、「名前を付けて保存」を選び、「保存の形式」でテキスト形式(拡張子は.txt)を選び、保存する。
 (2)しかし、その前にすることが!
 @罫線や枠は削除したり、表は文章形式に直しておく必要があります。なぜならば、それらがあると、ぐじゃぐじゃの点訳レイアウトになってしまうからです。基本的に、表や特殊な記号が多い数学・理科などは自動点訳にかけられないと、認識しておいた方がよいでしょう。また、枠線を消しても、各行の行末に改行マークが付いてしまったり、枠線の分だけ半角の空白マスが入ってしまうので、点訳の時に相当乱れます。むしろ、枠内の文字データだけをコピーして別な場所に移した方が、文章がつながって点訳がうまくいきます。
 A墨字文書で、段落の改行マークを適切な位置で付けておくこと。改行マークがあることによって、行替えや行頭2マスあけを判断してくれます。
 B墨字文書のレイアウトは、通常、大きなタイトルは左寄せで、小さな項目になるに従って行頭に余白を空けて見やすくしています。しかし、点字のレイアウトはその逆です。そのまま自動点訳にかけてしまうと、レイアウトの修正に大きな作業が必要ですが、結局は行頭のマスあけなどももう一度修正しなくてはいけないので、同じ作業をすることになります。でも、一つだけ気をつけておくこと。
タイトルは、行頭からではなく、少しますあけを多くしておくとよいでしょう。インデントを使って字下げをしている人はいいですが、空白マスを入れて字下げをしている人は、その空白を消しておきましょう。空白によって全く別物の言葉になり、分かち書きの修正が大変です。

         さあ、ダウンロードしましたか?

4.IBUKI-TEN(イブキテン)の使い方
 ダウンロードすると、次の二つのソフトに別れて、ディスクトップ上に二つのアイコンが出来ます。どちらを使うかは、それぞれの使い勝手です。
 (1)自動点訳後の編集機能がある「IbukiTen Edit」
 これは、あまりお薦めできません。でも、IbukiTen Proと使い勝手がほとんど同じで、それに慣れている人は、これを使いたくなります。でも、ページ番号の付け方に不備がでるようで、後で片面書きや両面書きを設定する時に大変です。つまり、ページ行に文字データが入り込んで、もう一度そこだけの打ち直しが必要になったりします。これは大変な作業です。
 一応使い方を説明しておきますが・・・。
 「ファイル」→「ファイルから読み込み点訳」または「ファイルから読み込む」「点訳」を選べば、上画面にテキストデータ、下画面に点訳データが表示されます。この下の画面は、IbukiTen上で編集する場合で、自分の使い慣れた点訳ソフトで修正する方が楽ですから、ほとんど使いません。ですから、すぐに「ファイルに保存」を選びます。この時に「BASE(.bse)」で保存することが大事です。
 ※IbukiTen Proを使っている人は、大丈夫です。点訳後のデータは全て片面書きの22行設定として保存されます。

 つまりは、次号で解説する「IbukiTen」を使えばいいのです。