日本点字事情
かわら版

横浜市立盲学校
点字研究部

文責 道村静江

2006年2月13日発行 NO.61
 今年度も残り少なくなってきました。これから約1ヶ月間、猛烈な忙しさが待っていますね。それに加えてインフルエンザや花粉症も押し寄せてきます。みなさん、体調管理を万全にして乗り切りましょう。
 さて、点字研修会もあと2回。今度はPC点訳について解説します。

           点訳ソフトの種類
 1.ブレイルスターシリーズ(.bls .ble .bs)
 PCが使われ始めた1990年の初期の頃、本校では「ブレイルスター」が主流でした。これは、全盲の人にも使いやすく、コマンドが点字の頭文字と組み合わされていて、いろいろな操作を実行する時にとても便利なものです。例えばスペースキーと組み合わせて次のような点字を押せば一発で実行できます。
  コピー→コ  移動(転送)→テ  削除→サ  上端カーソル移動→ウ
  下端カーソル移動→シ  トップ(ファイルの最初の行)→ト
  ラストライン(ファイルの最終行)→ラ  次頁(ネクストページ)→ネ
  前頁(バックページ)→ハ  オール読み(全文読み上げ)→オ
とても機能的にできているのがよくお分かりでしょう。職員みんなこれを使っていました。「ブレイルスター(.bls)」は仮名表示ができず、みんな点字表示で見ていました。98シリーズ(Meまで対応)でさらにバージョンアップしたものは「ブレイルスターU(.ble)」でした。これは仮名表示もできますが、全盲の人にとってはさらに使いやすくなったソフトでした。そして、XPに対応する「ブレイルスターV(.bs)」も出てきて、専攻科の全盲の先生は、このブレイルスターシリーズを使っています。また、このソフトは、他のソフトへの互換性もよく、全盲の先生も使う人のソフトに合わせて変換したものを手渡すようにしてくれているようです。以前は、私たち教員も生徒にこれらのソフトを使わせ、点字と組み合わさったコマンドの実行方法を教えて指導していました。

 2.BASE(ベイス)(.bse)
 次に登場してきたのが、点訳ボランティア用の「ベイス(.bse)」です。これは無量寺(だったかなあ?)という不思議な名前の所が提供したDOS版の無料ソフトで、非常に安定していて、あっという間に全国に広まりました。.bseの拡張子は見たことがあるでしょう。このソフトが全国シェアの大部分を占め、しかも、98シリーズ(Meまで)にしっかり対応できていたためにとても広く長く使われていて、それ以後作られた点訳ソフトもこのベイスを無視できなくて、互換性を持たせる時にこのベイスを介するものが多くなったのです。

 3.その他の点訳ソフト
 ○WINB(ウインビ)はBASEのWindows版で、無料。
 ○T・エディタ 加藤文彦さんが作成したもので、無料。
 △コータクン 付属盲の高村先生が作成したもので、有料で48,000円もする。
などいろいろあるので、ネットで「点訳ソフト」を検索すると一覧が出ています。その他にも自動点訳ソフト、点図ソフトなどが一覧・ジャンプできます。
 アドレス http://j7p.net/soft/braille.html

 4.いよいよWinBESの登場
 みなさんご存知の本校で使われている「WinBES99」はwindowsMeまでに対応していたフリーソフトでIBMから提供されていましたが、2003年11月にそのダウンロードができなくなりました。しかし、フロッピー2枚のシステムという手軽さから、今でもDisk1、Disk2の2枚分をインストールするだけで十分に使えます。サーバー室職員用のソフトウェアーのフォルダからとりだしてもいいですし、個人で所有している人も多いので、コピーしてもらうとよいでしょう。
 ただし、これはMeまでの対応で、バージョンアップ対応が遅れたせいで、XPパソコンに入れると文字表示に不具合を起こして使えません。とても困った人が続出。そこで緊急対応策として4種類のフォントを再インストールすることで一時的な解決はできます。その方法を親切に解説してくれているのが、早稲田大学点字会です。そのアドレスは、http://www.waseda.jp/L1-tenjikai/xpwinbes.html
 私のXPパソコンも、このフォント再インストール作業でうまく動いていたのですが、ある時急に動かなくなりました。もう一度フロッピー2枚で再インストールをしましたが、どういうわけかもう動いてはくれませんでした。
 そこで、XP版に改良された「点字編集システム3」(テクノツール株)の登場です。これは、WinBES99と全く同じ使用です。ただし、有料で5,980円します。それほど高くないし、仕事には必需品とダウンロードして購入しました。1週間のお試し期間があります。とても安定して、何の心配もなく使えます。
「点字編集システム3」ダウンロード先は、http://www.at-shop.com/index.html

 5.PCは6点入力できる機種を選んでください。
 今お持ちのPCが6点入力できる機種かは、WinBES を使っていれば簡単に確認できます。「設定」→「入力設定」→「入力方式」→「6点」を選択すると、「キー設定の確認」で六つの○(白丸)が表示されます。FDS,JKLの六つのキーを同時に押して、六つの○が全部●になればOK。そうならない時は、そのキーボードは同時入力を認識しないのです。しかし、あきらめるのは早い。6点入力可能なキーボードを接続すれば可能です。「ローマ字入力」で点訳している人も多いと思いますが、記号や特殊音を入力する時はもうお手上げです。点訳ソフトを使いこなすなら、6点入力ができる機種を選ぶことが必須条件です。
 また、手持ちのPCにWinBES が入っていなかったり、これから新しいPCを購入しようとする人は、是非キーチェックを試してみてください。キーボードの同時押し検出ソフトBR-KEYCHECK.EXE が無料で簡単にダウンロードできます
http://www.oadg.or.jp/accessibility/index.htm#brkey)これを実行してください。81KBの小さな実行ファイルですから、FDに入れてお店に持って行き、「点字関係の特殊な仕事をしているので、これができないととても困るのです。ウィルスは入っていませんので、キーの同時入力ができるかどうか確認させてください。」とお願いすると、誰もいやな顔をせずに試させてくれます。しかし、店頭に並ぶPCのFDドライブはほとんどが外付けなので、FDドライブも持参するとよいでしょう。もしくはUSBのフラッシュメモリーに入れて持っていくとよいです。
 盲学校の職員なら、6点入力ができるPCを入手されることを強くお薦めします。そうすれば、職員室のPCがふさがっていても、自分用のPCで、あるいは自宅で点訳ができます。
 6点入力可能なキーボードの一覧がネット上で見られます。時々更新してくれていますので、かなり新しいデータが見られますが、全ての機種の動作確認を行っているわけではないので、載っていないものもたくさんあります。
  http://park1.aeonnet.ne.jp/~voicenet/6ten.htm
会社名だけでなく機種によっても本当に様々なので、購入する時は実際に自分でキーボードチェッカーKEYCHECK.EXE で確認することをお薦めします。
 さあ、これで自分専用の点訳ができるPCが決まりましたね。