日本点字事情
かわら版

横浜市立盲学校
点字研究部

文責 道村静江

2006年1月16日発行 NO.60

 今回は、各教科の特性に応じた点訳の方法を示しますが、これが全てではありませんので、点訳便利帳の他、点字数学記号解説・点字理科記号解説・試験問題の点字表記など、詳しく書かれているものも参考にしてください。

試験問題の点字表記 その2

1.数学・理科        <p.49 U 中・高等学校の数学の分野>
 小学校の「算数」と中高の「数学」では使われる記号が大きく違います。教科書もそうなっていますので、試験問題も完全に使い分ける必要があります。絶対に間違った表記をしないでください。また、この教科は自動点訳は使えませんので、直接入力をしてください。
 主なものを書き出しておきますが、その他にも細かい表記が違ってきていますので、注意してください。
 @ 数式の始まりには、数式指示符を使います。この時に数式が何で始まっているかで、数式指示符が必要かどうかの区別がありますので、注意してください。数符で始まる場合と言葉を囲むカッコで始まる場合には使いません。
 A化学式や化学反応式にも数式指示符と同じように、化学式の指示符を使います。その書き方は従来のものと違っていますので、注意してください。
                      <p.89 第7章 理科記号>
 B分数には、分数囲み記号を使います。数字だけの簡単な計算式の提示でも、分数が最初に来ている場合には、分数囲み記号が使ってあるので、数式指示符が必要です。                 <p.50 3.分数>
 C単位には、単位カッコを使います。一般日本語文中の表記や小学校の範囲では、この単位カッコは使わずに外字符を前置しますが、数学や理科の教科書、試験問題には、5mや3gなどの簡単な単位でも、単位カッコを使いますので、注意してください。この場合、数式指示符は内部には使いませんし、日本語で書き表される単位(平方メートルなど)にもマスあけをしないでひと続きに書くなどの書き方のきまりがありますので、注意してください。
                  <p.51 5.単位 p.93 7.単位>
 D文中に「数(すう)」として提示した数字は、その後の助詞との間はマスあけをします。もちろん単項式や多項式の提示も同様です。
「5個の  5□の  5a□の」などのマスあけに注意してください。
 E数式中に使う小カッコ、中カッコ、大カッコの記号が、開きと閉じがはっきりした記号に変更になっています。また、点訳上付け加えるカッコなどは、全てを用います。
 Fギリシア文字を使う場合は、日本語文中では、外字符を前置した後に小文字・大文字の区別を付けて書き表します。
  α線   円周率π エンシューリツ 
 G根号のついた式にも、数式指示符を前置する必要があります。<p.53>
 H右肩・右下の添え字で、数字の後に添え字のa〜jを書く時は注意が必要です。指数で2乗、3乗、−1乗にも特別な書き方があります。

2.英語
 基本的に、高等部の英語問題は略字・縮字を使ったグレード2(2級英語点字)で作成することを原則としています。しかし、生徒の実態に応じてグレード1で対応することも可能です。グレード2を習得している受験者にとっては、略字・縮字を使ってある方がはるかに速く読めて理解も早いので、有利です。作成者側はグレード2とグレード1の2種類を用意しておく必要があります。
 英語も、自動点訳にかけると、日本語と英語が混ざっているので、外国語引用符や外字符の使い方に混乱が出てきますので、使わないでください。直接入力の方が正確で速いと思います。
 @試験問題は、日本文と英文や英単語が入り混ざっています。日本語体系なのか外国語体系なのかの区別をはっきり付ける必要があります。それは、同じ行や日本語文の中に書く時は、外国語引用符や外字符を書かなくてはいけないし、行を替えることによって、符号を前置する必要がなくなる場合もありますので、はっきりと使い分けてください。
 A外国語を表記する時には、外国語引用符と外字符の使い分けが必要です。何でもかんでもどちらか一つということはありませんので、注意してください。
 B英文中で使われる記号類は、日本語の記号と違っているものが大変多いので、間違えないようにしてください。また、カッコ類や指示符類なども変形第3指示符のように、略字・縮字などとの誤解を招く場合など、使い方に注意が必要なものもありますので、気をつけましょう。
 Cグレード2を使っていても、選択肢の中で単独で使われる特定の単語については、点字略字は使わないことになっていますし、発音・アクセントなどを問う単語問題でも、略字は使いません。その他にも、フルスペルと点字略字を使い分ける場面がありますので、注意しましょう。

3.国語・社会
 特別な記号や符号はないので、日本語の点字表記に合わせて記述すればよいですが、長文、段落引用、同音異義語などの理解が難しい言葉、解答の書き方で、墨字と比べて点字が不利にならないような配慮が必要です。
 @漢字を必要とするような問題には、工夫や差し替えが必要です。また、文字の数で答えさせる時にも、墨字と点字では数が違うので異なった指示が必要です。
 A長文になる場合、問題指示文、問題の本文、設問、選択肢などの区別をレイアウトや番号・記号ではっきりつけ、探しやすいようにしましょう。
 B段落の引用には、段落引用符などを使いますが、受験者がその記号を知っている必要があります。棒線などで囲って区別してもよいでしょう。
 C同音異義語など理解が難しい場合には、点訳者挿入符を有効に使うことも必要ですが、多用しないようにしましょう。語句の説明に、注が使ってある場合には、文中注記符や第3星印などを使います。
 D指示した箇所や注を書き出す場合には、頁番号や行位置を指示してあげることも大切です。

4.数学・理科・社会などでの表や図の挿入
 @問題文の中に組み込むことは難しいですので、別紙参照の形で添付するのがよいでしょう。その時には、表や図の番号が問題文と一致するようにしましょう。
 A表や図の提示だけでは読み取りが難しい場合がありますので、その解説が必要になります。墨字に比べて不利にならないようにしましょう。
 B理科などで、図を書く時には断面図的表現とし、見取り図は避けます。図は、触察によって識別できるように不必要な要素を省き、場合によっては、全体図と部分図、上から見た図と横から見た図などに分けて示すなど、工夫が必要です。