日本点字事情
かわら版
横浜市立盲学校

点字研究部

文責 道村静江
2005年12月5日発行 NO.58
               【書き方のレイアウト その2】

2.空白行の使い方
  @最初の大きな見出しの後や大きく内容が変わったり、段落が変わるところなどに使います。空白行を入れることによって、その箇所を早く探し出すことができます。でも、墨字と同様に使わなければならないというものではなく、状況に応じて適宜使います。空白行を入れたために、最後の1、   2行が次頁にはみ出してしまうなどというのはもったいないことです。
  Aしかし、試験問題などでは、検索を容易にするために積極的に空白行が使われます。設問と次の設問の間、設問と選択肢の間などは1行あけると、とてもわかりやすくなります。入試などの問題量が多い場合には、大きな問題が変わる度に頁替えをします。でも、学校の定期試験などではそこまでする必要はありませんが、頁の最後の数行に問題文がきて次頁に渡ってしまうということは、避けたいことです。そんなときは最後は空白行にして、次頁から新たに問題文を書いてあげましょう。
  (試験問題の書き方は、便利帳のP.81にも取り上げていますし、『試験問題の点字表記』が日本点字委員会から発行されています。)
  B文書の終わり、大きな内容の切れ目、試験問題の大問の最後などに、「おしまい」という意味で、空白行の代わりに、行の中程に棒線(ADADの点)の連続線を書く場合もあります。

3.右寄せの書き方
  @墨字文書で右寄せしてあるような箇所を書くときには、行頭から10マス   以上あけて書くことを原則とします。しかし、1行に書ききれないときは、   2行にわたるよりも行頭のマスあけを少なくしてよいですが、見出しと区   別できるようにすることが大切です。短い名称などは12マス以上あける   こともあります。
  APC点訳などは、後で行末を右寄せで揃えることも容易にできます。
  日付・所属・名前など数行にわたる右寄せ行の文字の書き出しを揃える必要はありませんが、あまりにバラバラでも困ります。2マス程度の差をつけて見やすさを整える感覚も必要でしょう。
  B年月日などや「職員会議資料」等の資料名なども、そのまま書くと文字数が多くなり、右寄せの意味合いがなくなることから、すべて墨字通りに書くのではなくて、必要に応じて数の略記や「職会資料」のように会議名・部署名・資料名を略して書いてもよい。

4.「行替え」と「行移し」の言葉の使い分け    <P.70>
  @「行替え」は、改行して行頭二マスあけをする時のことを言い、「行移し」   は、ひと続きの文章がその行に書ききれないとき、行末で区切って次の行   頭から書くことを言います。どうも「行替え」はよく使いますが、「行移   し」の言葉はほとんど聞かれません。生徒にも正しく言ってあげましょう。

5.行末の空きはもっと節約できます。
  @自動行末処理がついているPC点訳では、バンバン行移しされていくので紙面の右側がもったいないくらい空くことがあります。そのために、行がどんどん増えて、最後の頁では1,2行しかない紙面ができるということにもなりかねません。また、パーキンスなどの手書きでも、入るかなあと思って行末まできたのに、あと少しが入らなかったと悔しい思いをすることがあります。そんなときは次の許容の規則を思い出してください。
  A本来ひと続きに書き表すべき助詞の前、助動詞のうち「ようだ」・伝聞の「そうだ」・「ごとし」・「らしい」・「みたい」・「です」・「だ」の前で行移しをしてもよい。
   また、単位の前、カッコ類や点訳者挿入符の開き記号の前、波線や複合語内部のつなぎ符類の後ろなどで、行移しをしてもよい。
  B助詞全部やこれだけの言葉が行移しできるとなると、かなり紙面を活用できます。しかし、あくまでも「本来ひと続きに書き表す語」であることを十分に承知した上での話であって、自分のメモや職員間での文書程度にとどめ、生徒の教材や配布物には避けた方がいいでしょう。でも、カッコ類の開き記号の前、波線やつなぎ符の後ろでの行移しはよく使われていますので、問題なく適用してください。

6.いろいろな文書  <ぜひ知っておいてほしいこと>
  @ページ番号(P.71):両面書きは、奇数ページにだけ付け、偶数ページには付きません。PC点訳では、28マス目から書きます。教科書では、墨字原本ページ番号が左上にメで囲んで書いてあります。
  A誤記の訂正方法(P.71):間違えた箇所ひと続きを全部メ打ちをして、その後1マスあけて正しいものを書きます。
  B作文などの名前の書き方(P.71):行末を少し空けて右寄せで書きます。自分の名前は、行頭何マスあけるとよいのかを覚えておくとよい。学年と名前の間は2マスあけ。
  C手紙の折り方(P.73):三つ折りや四つ折りの方法は覚えておくとよい。
  D点字用郵便の出し方(P.74):封書では、点字が入り、それと同じ内容の墨字が入っている場合は、左上に「点字用郵便」と書いて、左上を少し開封すると無料になります。箱で送る場合は、3kg以下が無料になります。宛名の左上に点字用郵便と書き、郵便局で中身が点字であることを確認してもらってから封をします。
  テープやFDなどの無料郵送も可能ですが、送り主や送り先が盲学校などの特定機関に限られます。
  E表の書き方(P.75〜77):墨字と同じように揃える必要のある表か、羅列で処理できるものかを判断する必要があります。数字の縦列を揃える時は、数符で揃えるか、一の位で揃えるのか。項目とデータの配列や書き方をどうするのか。項目を羅列する時は、項目の間の区切りをどうするか。点字化する方法をどのように説明するか。表の枠を入れるか入れないか。単位をどうするのか。1行におさまる文字数か。事前にこれらのことをよく考えてから取りかからなければなりません。例がたくさん載せてありますので、よく理解して応用できる力を養ってほしいです。
    実際には、会議資料などで省略されるケースが多いですが、情報の共有化を図るべき盲学校内においては好ましいことではありません。できるだけ簡潔に読みやすい点訳方法で、提供すべきだと思います。

 分かち書き、記号・符号の使い方、レイアウトなどが総動員されて、一つの点訳文書が出来上がります。盲学校の職員ならば誰もが必要な技能です。ファイト!