日本点字事情
かわら版
横浜市立盲学校

点字研究部

文責 道村静江
2005年12月5日発行 NO.57
 いよいよ師走になりました。二学期制のおかげで年末の成績処理がなくなり、「教師が走る」のが少し楽になりましたね。1枚になったカレンダーをながめながら今年を振り返ることも多くなりました。みなさんの点字技術はいかがですか?首をつっこめばつっこむほど奥の深いことを感じておられることでしょう。難しそうだからいや!と弱腰になるのではなく、つっこむことを楽しんでください。理屈のあることを解明する楽しさを味わってください。
 いよいよ終盤戦に入ります。「書き方のレイアウト」です。これをマスターすると、ほとんどのものが点訳できるようになります。ただし、この「レイアウト」は、表記法でも強く規定されておらず、非常に自由度のあるもので、目的と必要に応じて工夫することができます。しかし、点字の世界のことがよくわかっていないとせっかくの工夫や配慮が、とんでもない見当はずれだったりします。点字使用の人以外は、実際の点字文書を読むことはほとんどないので、正式なものはどういうものなのか、慣習となっているものは何なのかの情報集めも大切だと思いますし、自分が出した点字文書の書き方がそれでいいのかの確認も必要です。
 また、点字使用の先生も、読んで間違っていたりおかしいなと思ったら、是非その人に声をかけてあげてください。それが職員間の点字技術を向上させるもとにもなりますし、生徒への還元にもなっていくのですから。

              【書き方のレイアウト その1】
                第6章 書き方の形式 p.67 

1.見出しの書き方
 (1)見出しのマスあけ   <p.67 1.(1)>
  @点字は手で触って見出しの序列や数、段落などを探すので、点字用紙の左端をサーッと縦に触ってその箇所を見つけ、その序列を判断します。ですから行頭からどれくらい空いているかがポイントとなります。
  A見出しは4・6・8マスあけの段階を追ってとりますが、一番小さな見出しは4マスあけ、一番多いのが6マスあけです。8マスあけとなると1行に入る文字数が少なくなるので、一番最初の大きな見出しに使うのがよいでしょう。
  B段階の違う見出しが多くある場合は、マスあけの差をつけて書くことが難しい。そんなときは同じマスあけレベルの見出しがあってよいのです。
  ただし、その時は数字につける記号レベルを必ず変えます。
  C小さい項目は、二マスあけですが、その時は必ず数字や記号を付け、見出しであることを明らかにします。

 (2)見出しが長いとき
  @4マスあけ以上の大きな見出しで、1行に入りきらないときは、2行目以降は1行目の書き出しからさらに二マス下げて書き、3行目は、2行目と同じところから書き始めることになります。1行目は4マスあけて、2行目は行頭から書く人がとても多いですが、完全な間違いです。
  ただし、大きなタイトル以外の見出しが2行や3行になるようなときや、文として表されているときは、最初の行に必要な見出しのマスあけをして番号だけを書き、行替えをして次行に行頭二マスあけで書いた方が見やすいので、このテクニックもおすすめです。
  A行頭二マスあけて書いた項目などの見出しが長いときは、次行は行頭から続けます。ただし、見出しと本文の間は必ず行替えをします。
  B試験問題など、大きな問題番号の後に長い問題文が書かれている場合、問題番号だけを4マスあけで書き、行替えして二マスあけで問題本文を書きます。小問は二マスあけでよい。

 (3)見出し記号 <p.67 1.(2)>
  @見出しにはよく数字やアルファベットが使われますが、段階の序列としては、裸数字(アルファベット)・ピリオド付け・カッコ付け・カギ付けの順となります。裸数字(アルファベット)の後は二マスあけ、ピリオド付けの後は一マスあけとします。カッコ・カギ付けの後ももちろん一マスあけです。
  A数字やアルファベット以外にも、カナの見出しがありますが、その時は裸のカナは誤読のおそれがあるので使いません。必ず記号を添えます。
  B番号や記号が付いていない語句や文だけの見出しも多くありますが、強調したい時などは、カギなどをつけて書き表すとよいです。教科書などでは変わった飾り記号なども使われています。
  C墨字では様々な見出し記号がありますが、それをそのまま対応させてはいけません。必ず点字の序列に置き換えて書き表します。その時に採用する点字記号は必ずしも裸数字から始めなくてもよい。
  D墨字では項目毎に・(クロポチ)で始まることも多いですが、この・(クロポチ)は省略して行頭二マスあけに代えます。
  E墨字で見出し番号のない小項目で始まるものは、小見出し符が有効です。また、強調の星印・米印・アステリスク等が付いて始まるものは、星印を使います。
  F墨字では、文書作成者の好みで番号の振り方に特徴があります。
  裸数字をほとんど使わない人、1.から始まる人、1.の後は@をもってくる人(@に第1カッコの記号を使う)、さまざまです。できるだけ原文を尊重して記号を割り当てるとよいでしょう。1)のような半カッコを使う人もいますが、これに該当する点字はありません。(1)に直します。
  Gしかし、とても困る場合があります。
  例えば、このかわら版のように、裸数字の1がなくて、1.から始まっています。さらにその下には、(1) @と続いています。これはとても点訳のしにくい例です。なぜならば、1.にはピリオドを使い、(1)に対応する記号に第1カッコを使うと、その次の@に対応する記号がないからです。(第1カギの付いた見出し記号はほとんど使われていないようです。)
  そんな時は、1.で始まっていても、裸数字を最初に使い、順次(1)を1.に、@を(1)に置き換えていく方法もあります。
  しかし、ここで注意しなくてはいけないことは、墨字と点字を同時に参照して説明をする会議のような場合、説明者の指している番号に混乱が生じる場合があります。また、試験問題など墨字と点字では回答番号が違ってくることも混乱の元になります。このような時は、墨字文書を作成する段階で、記号や番号がはっきりわかる種別を使う配慮が必要です。理療科の先生などはこのような配慮を事前にして文書作成を心がけています。
  このかわら版で言えば、@を(ア)に変えるとよいのです。