日本点字事情
かわら版

横浜市立盲学校

点字研究部

文責 道村静江
2005年6月13日発行 NO.51
       第3回 点字研修会 Part1
              「分かち書き その2」

 1.「する」(サ変動詞)の書き方  <p12 6.>
 名詞や副詞に「する」が続く場合は、区切ると覚えましょう。2001年の改訂前は、この項はとてもややこしく、文法的に難しかったのですが、今回、とてもスッキリしました。しかし、「する」という言葉の裏にかくれている語句をしっかりと把握しておきましょう。つまり、「する」が活用変化した言葉で、「させる、し、せよ」などです。特に、「確認□し」などはつい続けてしまうので、気をつけましょう。
 本来、「名詞+する」は複合語に分類され、便利帳の「その2 複合語」の分野に入れるべきなのですが、初心者が「する」「して」「ない」はどうするんだっけ?と考えてしまうことが多いので、あえて同じような場所に置いて解説しました。
【注意1】1字漢語(音読み)に続く場合で、促音化、撥音化、連濁、音韻変化の場合は続ける。
【注意2】1字漢語(音読み)に続く場合で、「を」をはさめる場合は区切る。
【注意3】1字の和語(訓読み)に続く場合は区切る。
     (特例として続ける場合は例の二つぐらいだけ)

 2.「して」の言葉が出てきたら、動詞の「する」が変化した言葉なのかを見極める。動詞でなければ、続ける。ここにある続ける例は、文語的表現の助詞だからですが、その判断が難しいときは、区切る。また、一語になっている言葉も続ける。 <p13 7.>

 3.「なさい」「なさる」の書き方  <p13 8.>
 動詞の「しなさい」「する」が変化した言葉なので、区切る。
 ただし、動詞の語尾変化(連用形)や、「いなさい」の「い」が省略された場合は続ける。「お」が付いて名詞化した言葉もよく間違えます。「休みなさい、お休み□なさい、おやすみなさい」の違いを確認しておきましょう。

 4.「ない」の書き方  <p14 9.>
 動詞の語尾変化か、形容詞か、一語になっている言葉か、見極める力をつけましょう。

 5.「〜く+なる」の書き方  <p15 10.>
 これもややこしい。二つのパターンがあって次のように覚えるとよい。
@形容詞の連用形「〜く」の後は、区切る。(発音すると半ポーズあるような気がする。)
A「なくなる」の言葉で、消滅を表す複合動詞は続ける。(無くなる、亡くなる)

 6.「できる、できない」「ある」「いう」の前は、もちろん区切る。 <p15 10.11.12.>

        「複合語の切れ続き その1」
 「切れ続き」とは何か?
 点字には、「文の単位毎に区切る」(いわゆる文節分かち書き)という第1原則があります。これらは平均して4,5拍程度で、記憶の単位としても適しています。
 ところが、複合語や固有名詞の中には、6,7拍以上にもなるものがあり、記憶の単位としても長すぎます。墨字の人は、言葉全体を目で確認し、しかも漢字が入っていれば即座に意味の区別がつきますが、点字は一音ずつ読みとっていって、その音を記憶の中で組み立てて意味ある言葉としてとらえていくものなので、拍数の多い語は読みとりにくいのです。だから、一つの文節ではあっても、長い複合語などは読みやすさのために、内部を自立可能な意味のまとまり毎に切りましょうという「切れ続き」の第2原則が生まれてきたのです。
 この章では、接頭語・接尾語・造語要素などの「くっつき言葉」かどうかの判断、2拍か3拍かの判断、意味を即座に判断させるためにはどのような切り方がよいのかの言葉感覚が要求されます。そのことを念頭に置いて、この章を理解してください。

 1.一語になっている言葉を見分ける。 <p16 1.>
 @「朝夕、草木、勝ち負け」などは、短いし、一語になりきっているし、ブツブツと切ったら変!これはたぶん問題ないと思います。
 A「世の中、男の子、日の出」なども、助詞が挟まっていても一語としての感覚で捉えられる言葉です。「木の葉、木の実、木の芽」はどうでしょう?「キノ□ハ、コノハ」「キノ□ミ、コノミ」「ヤナギノ□キノ□メ、キノメ□デンガク」この違いが分かるでしょうか?「上の空(ウワノソラ)、目の当たり(マノアタリ)」なども読み方によって意味が違ってきますよね。また、「虎の巻、身の上、つかの間」なども文字通りの意味から少しはずれて、特別な意味合いが含まれた言葉になっています。このように助詞で切れない言葉、一語になっている感覚をつかみましょう。
 B「学割、高卒、英検」などの省略された言葉の一語感覚は、大丈夫ですよね。

 2.「くっつき言葉」とはどんなものか? <p16 2.>
 「接頭語・接尾語・造語要素」と難しい言葉で書いてありますが、単独でははっきりとした意味を持てず、本体に意味を付加して補う言葉です。
接頭語には、「真、新、第、旧、各、全、前、反、超、最、不、無、非、元」など多数。
接尾語には、「化、毎、的、者、宛」などの漢字語と「ずつ、たち」などがよく登場します。接尾語は比較的続ける人が多く、間違いも少ないですが、接頭語の書き方はいろいろです。
 その大きなポイントは、文字を一つずつ最初から読んでいくと、接頭語でも後ろの言葉と続けてしまい変なところで発音のポーズをおいてしまうと、意味を取り違えたり、違う言葉になったりしてしまいます。だから、最初に付く短い言葉をどう知らせてあげるかが、「意味の理解を助ける」ということなのです。最後に付く言葉は、文字を読み進めていけば、内容が分かり、予測が付いて、くっついていても容易に意味が分かるから意外と大丈夫なのです。重要なのは、「最初の短い言葉」です。本来は続ける言葉でも、はっきりと知らせてあげるために、切る場合が意外と多いです。
 その一つの目安となるのが、「発音上の切れ目(いわゆる半ポーズ)」です。これは人によっていろいろな発音があるので難しいのですが、実際に発音してみて、最初にアクセントがあって強調されていると、その後に半ポーズある場合が多いです。p.17にたくさんの例を載せておきましたので、実際に発音してみて、その切れ目を実感し、感覚をつかみましょう。また、「点字表記辞典」も参考になりますが、載っていない言葉もたくさんあります。語例から類推するしかありませんが、多少間違っても目をつぶってもらえるかもしれません。