日本点字事情
かわら版

横浜市立盲学校

点字研究部

文責 道村静江
2005年5月16日発行 NO.48

 さて、いよいよ実践的な内容に入りましょう。
 今号は、5月の「点字研修会」で解説する内容を紹介し、「点訳便利帳」のどこに書かれているのかを載せます。そのことによって、研修会後ももう一度自分で便利帳を開いて確認することができます。研修会での内容をざーっと聞いただけでは、あまり力にはなりません。是非とも便利帳のどこに何が書かれているのかを自分で確かめ、迷った時に調べられるようになってください。

第1回 点字研修会 「語の書き表し方」 日本語と数字

その1 日本語の書き表し方
1.文末の「は」「へ」を、「ワ」「エ」と書くのが癖になっていますか?
<p1,2.(1)>[便利帳に書かれている箇所です]
 これをまだよく間違える人は、「ローマ字入力」に頼っている人です。校正段階ではなかなか発見できません。最初から意識して入力しなければなりません。6点入力で書いている人は、ほとんど間違えない基本です。だって、発音通りに書いているのですから。

2.のばす音で長音符を使うものの区別はできていますか? <p1〜2,2.(2)3.(1)>
 まず、頭で理解しましょう。便利帳にはややこしく書かれているような気がしますが、これは墨字を知らない点字使用者向けの解説だと思ってください。墨字を知っている人は容易に理解できる方法があります。『墨字で「う」と書かれていて、のばすように聞こえる音は長音符を使い、のばすように聞こえる音でも「あ」「い」「え」「お」と書くものは全てその音を書く』と理解しましょう。これでスッキリと説明がつきます。漢字にどんなふりがなを振ればいいのかを考えてください。これを間違える人は、やはり「ローマ字入力」に頼っている人です。
 よく間違えるのは、「オ」を添える和語<p2,A>ですが、これらは全て訓読みの漢字で、音読みの漢字は長音符を使います。もちろん、語頭に書く「う」と動詞の語尾の「う」はそのまま書きます。もう一つ、「言う」は「ユー」と聞こえますが、必ず「イウ」と書きます。
 墨字を知らない児童・生徒に長音の書き表し方を説明する時には、「ウ列・オ列の長音」や「ア列・イ列・エ列の長音」の言い方で解説してもいいですが、これを理解できるのはほんのわずかです。児童などには語例で書き方を多く覚えさせる方がよいです。

 3.本来「キ」「ク」「ツ」と書くべき言葉で、つまったように聞こえる言葉は、促音符を使ってしまうと、本当の言葉がどんな言葉なのかが分かりにくいので、そのまま書く。<p3,(2)【注意1】【注意2】>
 児童生徒の多くは、最初促音符を使って書いてしまいますが、その言葉は本来そう書くべきものだと教え、読み上げる時につまったように発音させましょう。
 また、数字の言葉で1個、6本なども数字の後に促音符をわざわざ書いてしまう初心者がいます。数字の読み方の中に「いっ」「よっ」「ろっ」「はっ」「じっ」と促音が含まれていることは当然のことですよね。<p39,2.(1)【注意】>

 4.特殊音を覚えられないという人、「第2編 その3 特殊音」を見て、そのしくみを理解しましょう。<第2編p〔8〕〜〔12〕>
 この中で、最初の口元が開いて発音されるものが「開拗音系」でを前置。口元が閉じたように口先をとがらせて発音されるものが「合拗音系」でを前置。その前置点の区別が分かっていると、特殊音だと認識しやすくなり、似た発音もできるようになります。よく使われる特殊音(小学校段階までに押さえておくべき特殊音)<p4@>は一覧表を見ないでも書けるようになりましょう。

その2 数字を含む言葉の書き表し方
 5.数字は、ア行とラ行の10個から作られている。つまりは、上4つの点(@ACD)からできている。「アイウルラエレリオロ」と覚えるのはやめましょう。瞬時に数字が出てきません。形で覚えてしまいましょう。

 6.数字の後のカナはそのまま続けます。なぜ続けても数字とカナの区別ができるのかは、数字が上4つの点からできているからです。カナ46文字のうち、ア行・ラ行以外の36文字にはBEの点が登場します。数字を読み進めると下の方に点が出てくればそれは数字ではないと瞬時に判断がつくからです。しかし、ア行・ラ行が続く言葉は要注意!間に第1つなぎ符をはさみます。このつなぎ符はいろいろな場面でよく使われますが、前の体系を切って元に戻す時(リセット記号の意味)や言葉をつないだり、区別する時に使われます。理由は分かりますよね。数字との区別がつかなくなるからです。1レツが17ツになったら大変!そんな言葉は限られています。円、億、列、連などがあります。点訳しているとつい意識しないで間違えてしまいますが、点字を読むと明らかに違うのが分かります。助詞の「エ」「ラシイ」も同様です。<p39,2.(1)(2)>

 7.和語読みする言葉はカナで書く。数字の漢字音と和語読みの区別をはっきり付けておきましょう。 <p39〜41,(3)(5)(6) 特にp41【注意】>
 日付は絶対に間違わないでください。一日から十日までと二十日が要注意!
その他にも「2つ」と墨字で書いてあっても「フタツ」と書きます。

 8.数字を使う言葉とカナを使う言葉 <p40,(4) p41,(7)(8)>
 数字に、数量や順序の意味があるかないかで数字とカナを使い分けます。また、最初は数字的意味があったものでも、意味が薄れてしまったものもカナで書きます。この見分け方は、意外と簡単です。その数字を他の数字に置き換えてみて、そのような言葉が存在すれば、数字的意味があると判断します。言葉の中には数字を使ってあるものがたくさんあり、こだわり出すと難しいですが、そんなときは「点字表記辞典」で調べましょう。固有名詞も独特です。

 9.数字の位の付け方を覚えましょう。 <p37,1.(1)(2)(3)>
 大きな位の数字を書く時には、「万、億、兆」はカナで書く。「千」にはいろいろなパターンがあります。3桁までは数字を読み取る認識が高いので数字を連ねてもいいのですが、4桁になると微妙になります。数字で提示したい時は4桁まで並べてもいいですが、キリのいい数ではカナを使います。漠然とした数では「十」の位からカナで書く場合も多いです。

 10.重ね数字の使い方を知っていますか? <p38,(4) p42,(10)>
 およその数(二、三人 五、六百など)は重ね数字を使います。位がいろいろある時にはその書き方も違ってきますので、注意しましょう。この書き方でスムーズに読めるようにするのも児童生徒に指導しておかなくてはいけません。また、月日を省略して書く時や数字が並んでいる時も略記として重ね数字を使ってもいいです。点字での月日の書き方では、中点もピリオドもスラッシュも使いません。自動点訳では中点はそのまま表され、ピリオドは小数点になるなど正確に点訳しませんから、校正が絶対に必要です。