日本点字事情
かわら版

横浜市立盲学校
点字研究部

文責 道村静江
2002年3月20日発行 NO.46

「日本点字表記法2001年版」 改訂内容解説9
                             ラストです!
 16.自立語内部・固有名詞内部の切れ続き
     <表記法 第3章 第2節 第3節 p35〜48>
 この章での大きなポイントは、複合動詞「する」の切れ続きといわゆる2拍・3拍の問題です。44号で「する」については解説しました。残る2拍・3拍の問題は、大きな変更点はありません。10年前に取り上げられた拍の概念が少しずつ定着しているので、今これを変えるというのはまったく不合理なことです。この件に関しては様々な問題提起がされてはいますが、今回はさらに理解を深める意味で本則の説明文に手を加えたり、用例を検討して加除した部分が多くあります。それをこの年度末の切羽詰まった時期にじっくり解説することはとてもできませんので、この問題は新年度に入って落ち着いた時期に取り上げたいと思います。
 でも、せっかくですから簡単に一言だけ言っておきます。
 2拍・3拍がかなり話題になったことで、2拍は続ける・3拍は切るという感覚が次第に浸透しているようには思えますが、それを拍数だけで機械的に操作してはいけないということ。あくまでも言葉の持つ意味、語の理解を助けるための切れ続きでなくてはいけないということを根底において、そのための目安となる拍数の概念を取り入れるということです。では、また、いずれかの機会に・・・。

 17.その他、今までに書きもれた部分
 (1)点字楽譜の書き方
   <表記法 第4章 第5節 8.p78>
 点字楽譜記号そのものの変更はありません。説明を修正し、マスあけのことを書き、「上を向いて歩こう」の楽譜の例が追加されました。この改訂の時期だったら「明日があるさ」の方がよかったかも、というのは余談ですが。
 それよりも問題は、点字楽譜を読める生徒も指導できる教員も極端に減ってきているということです。小学校2年生の音楽の教科書から点字楽譜の基礎が載っているようなので、学校側でももう少し関心を持って指導しなければいけないのかもしれません。
 (2)見出しの書き方 <表記法 第4章 第6節 3.【注意】p82>
 大きい見出しは行頭8マスあけを最大にするというのは従来通りですが、小さい見出しについて書き加えられました。
 「最も小さい見出しは、小見出し符類などを付けた見出しを除き、行頭から少なくとも4マスあけて書き表すことを原則とする。」
 見出しの行頭のマスあけは、すぐに探し出せるように用紙の左端を縦に指を動かしたときに、そのへこみ具合から見出しとわかりやすくするためにあるものです。段落の二マスあけと見出しが同じだとわかりにくいから、今回このようなことを付け加えたのだと思います。
 小さい見出しの中には、その後に文が続く場合も多く、二マスあけにすると次行からは行頭に続けて書くことができるので、つい二マスあけにして書いてしまいますが、もしはっきりと見出しとして提示したいならば、見出し番号や記号だけを4マスあけにして書き、その後ろは行替えして書き始めるのがよいでしょう。

 18.章の増設
  第5章 書き方の形式と点字化のための配慮
 今まで「参考資料」として書かれていたものを新たに章を起こして、一定の指針を示したもので、用例が増えています。
<内容>文の種類による書き方の形式(詩、短歌・俳句、手紙など)
    表や略記、本文以外の割り付け、点字化のための配慮
<特徴>@詩の書き方で連の違いを表す方法  A表の書き方の工夫
    B目次の書き方           Cルビの書き方や中点の使い方
  第6章  古文の書き表し方
  第7章  漢文の書き表し方
 この二章分の解説は、私の専門外なので解説ができません。ご容赦ください。
  第2編  参考資料 W情報処理用点字表記の解説

 19.この改訂の適用について
 2002年度新学習指導要領による点字教科書に適用され、次のように年度を追って利用されていくことになります。
   2002年4月  小学校・中学校全学年の教科書に適用
   2003年4月〜 高等学校教科書に学年進行で適用
   (入学試験は、中・高等部では2003年度から、
    専攻科・大学入試では2006年度から適用)
 高等部では移行期間の2003年度・2004年度は、学年によって異なった表記をすることになります。
 留意すべき変更点は、かなりの量に及ぶ「切れ続き」の変更のように触読する上で基本的なものから、分数表記の変更のようにその分野の教育方法への影響が予想されるものまで多岐にわたっています。特に数学、理科、古文・漢文、英語等の教科の担当者は専門分野の改定点を熟知しておいてください。

 以上で、9回にわたるこのシリーズを終わりにします。3学期ずっと気になっていた仕事が期限内にできてホッとしています。何でこの時期に?ゴミ箱行きか、年度末の片づけものの中に紛れ込んでしまうのは目に見えているのに・・・とみなさんに思われても仕方がありません。
 こんなに焦った仕事の裏には次のような事情もあったのです。
 4月から教科書にこの改定内容が反映されます。それを最も焦って見守っているのは点訳ボランティアのみなさんかもしれません。本校に関わってくださるボランティアさんから、どこが変更になったのか教えてほしいという声もありました。点字研究部のHPを通して資料を欲しがっている人もいるようです。
 本校の職員にも50冊も購入していただきました。その意識と意欲には本当に感謝しています。この解説を読まれても、その前段階で苦労されている人も多いとは思いますが、資料が揃ったところでもう一度新たに学んでみようと思われる人もいるかと思います。児童生徒にも改定点を踏また上で指導をしなくてはいけません。そのためにも、4月前に資料を整えたかったのです。
 また、新学期から点訳便利帳の編集作業を急いで進めていかなければなりません。今回の改定点をしっかり把握しておくことも大きなカギとなることだと思いました。私も決してよくわかっているわけではなく、調べながら勉強しながらのかわら版書きです。とりあえずこのシリーズを終えたことで、次へのステップに行けそうです。お付き合いいただいてありがとうございました。