日本点字事情
かわら版

横浜市立盲学校
点字研究部

文責 道村静江
2002年3月18日発行 NO.45

「日本点字表記法2001年版」 改訂内容解説8

 13.読点や中点の扱い
     <表記法 第4章 第1節 3.【注意1】【注意2】p51〜43>
     <表記法 第5章 第4節 4.p114>
 中点の使い方について、第5章第4節の「点字化のための配慮」で次のように説明しています。
 「墨字では、中点がさまざまな用途に使われているが、点字で中点を多用すると読みにくくなるので、最低限必要なところにとどめることが必要である。」
特に、語句の切れ目を明らかにするために用いられている中点などは、マスあけに替えた方がよい場合も多くあります。
 また、実際に読点や中点を墨字通りに点訳すると、読みにくさだけでなく、間違った表記になる場合もあるので、注意が必要です。それは、第4章第1節3.に書かれています。
 本則で「重ね数字や略称を表すアルファベットの間では、中点を用いない。また、外来語の複合内部の切れ続きを表している墨字の読点や中点は、点字では原則として用いない。」とあるのは今まで通りです。日付の略記などで、墨字では3.19のように書かれてあるものを自動点訳ソフトなどにかけると
と中点を使用したようにみえますが、これはAの点の小数点になっていて明らかに間違いです。のように重ね数字を使います。
 同じように読点や中点をそのまま使うことによって紛らわしくなる例が出てくるので、その辺りを【注意1】【注意2】に書いています。
 【注意1】化学式などでの注意です。
   NO、SO、などは  □□□ナドワ
 化学式の分子式の数字は下がり数字を使用しています。そこに読点を使うと2と紛らわしくなるので、マスあけに替えます。中点は化学式特有の区切りになる。
 【注意2】英数字列を区切るような場合での注意
   問いA・B  トイ□
 外字符、大文字符、マスあけなどで区切りが明確なので省略します。
 【注意3】また、読点が他の記号と連続する場合などにも注意が必要です。
              <表記法 第4章 第5節 2.p73>
   「それでは、」と言った。  ソレデワト□イッタ 
  読点とカギが続くとふたえカギになってしまうなど、他の記号と紛らわしく なるようなときは省略することができます。
 ★いずれにせよ、読点、中点の使い方は数字やアルファベットの中では注意を要し、特に中点は乱用しないでマスあけに替えるなどの配慮が必要であることを心に留めておきましょう。その時々の場面で使用していいのか、マスあけに替えるのか、省略かなどを判断するためには、数字・アルファベット・記号類の用法や形をよく理解しておく必要があります。

 14.点字数学記号中の数式指示符の使い方
            <表記法 第4章 第5節 5.p75>
 数式の初めは、文章中か行替えしているかにかかわらず、数式指示符を前置して書きます。ただし、数符で始まる場合と言葉を囲む**から始まる場合は数式指示符は不要です。
 この数式指示符は、外字符と同じ形です。つまり、数字や言葉で始まるときには使わずにアルファベットで始まる時にだけ使うというのですから、外字符と同じ形となっているのはうなずけます。その他、ルートなどのような数式特有な記号で始まる場合にも付けます。これを式の先頭に前置したら、その内部では当然のことながらアルファベットの前に外字符は付けません。ただし、数字の後のa〜jには必要なのは当然です。数式指示符の後の数式の書き方は従来通りです。
 また、数式の前のマスあけは、数式指示符を使うときは一マスあけ、言葉を囲むで始まるときは二マスあけ。後ろのマスあけは、関係記号を含まない場合は一マスあけとし、数式に関係記号を含む場合と集合の和を表す式など必要なマスあけのある数式の後ろは二マスあけます。
 例 y=2x  □□□  (数式指示符使用)
   2y=3a+4b  □□□ (指示符不用)
 表記法に載っているのはこれと単位カッコのことだけですが、今回の改訂では、中学以降の数学関係で分数の囲み記号や数式中のカッコ類の変更がありました。関係する教科の先生は周知徹底しておく必要があります。(参照:点字数学記号解説 暫定改訂版)

 15.点字理科記号中の化学式の指示符の使い方
            <表記法 第4章 第5節 6.p76>
数式指示符の応用として、化学式にも同様の指示符を使用することになりました。使い方は数式指示符と同じです。
 ただし、化学式の場合、原子記号を表すアルファベットは大文字ですから、この指示符だけだと小文字と誤読されるおそれがあるので、アルファベットで始まる化学式や化学反応式等では、最初にのみ大文字符を前置します。なお、分子数を示す数字の後に必ず大文字符を付けるのは従来通りです。
 例 CO □□     2NH  □
   C+O→CO   □□ 
   2H+O→2HO    □ □□
  化学式では分子の係数は通常の数字、原子の係数は下がり数字で区別します。
 その他、理科の専門用語の切れ続きやカッコ類などの詳しい説明は、「点字理科記号解説 暫定改訂版」を参照してください。