日本点字事情
かわら版

横浜市立盲学校
点字研究部

文責 道村静江
2002年3月16日発行 NO.44

「日本点字表記法2001年版」 改訂内容解説7

 11.複合動詞「する」の切れ続き
               <表記法 第3章 第2節 7.p42〜43>
 一般表記の中での、今回の大きな改定点です。今までの「する」の切れ続きは難しい文法の解説がなければ理解できない内容でした。特に学校現場で児童・生徒にどのように解説すれば納得してもらえるのかは、頭の痛い部分でもありました。今回の改訂には賛否両論がありましたが、調査の結果、切ることを望む声が7割に達し、改訂に踏み切ったようです。学校でも教員が目まぐるしく代わる現状の中、児童・生徒への指導の面においても、この改訂は歓迎すべきものと私はとらえています。点字熟達者の方には「ブツブツ切れすぎていて気持ちが悪い」という感覚論もありますが、「それも慣れの問題でしょう」と言われ、初心者にとったら長く続いているよりも区切りが多い方が読みやすい、解説がしやすい方がよいとの指導現場での苦労もわかってくださり、この改訂を受け入れてくださっているように思いました。
 そこで、その解説ですが、やはり【日本点字表記法】は難しい。「サ行変格活用」「独立した動詞または代動詞」「五段等の活用形」などの文法用語が出てくると、お手上げの人も多いのでは?(私もその一人です)
 【点訳のてびき 第3版】には、もっとわかりやすく解説がしてありますので、ここではそれを引用することにします。

★名詞や副詞に「する」が続く場合は、「する」の前を区切って書くことを原則とする。
    勉強□する  お休み□する  1周□する  びっくり□する
<備考1> 1字漢語などに「する」が続いて音韻が変化したり(促音化・撥音化)、     連濁する語は続ける。
    達する  接する  重んずる  先んずる  命ずる  信ずる
<備考2> 1字漢語に「する」が続く場合はひと続きに書くが、「する」の前に助詞「を」をはさむことができる場合は区切る。
    関する  反する  労する  愛する  略する  和する
    得□する  楽□する  損□する  番□する
<備考3> 和語に「する」が続く語は区切って書くが、和語の自立性が弱いと思われる場合は続けて書く。(特別な場合で、少ししかない。)
    恋□する  噂□する  心□する  汗□する  与(くみ)する  閲(けみ)する
 では、慣れるために少し練習問題をしてみましょう。(答えは書きません)
<例題>
 @安全運転することを目標とし、一旦停止することを忘れずに注意して運転しよう。
 A炭水化物を食することが制限されていると誤解しがちであるので注意せよ。
 B楽して指導計画を作成しようとすることは意図していない。
 C書き方の形式を統一させ、適した記号を選択し、理解しやすい方法を習得させる。
 D実態に応じた適切な題材を用意したりして、学習の目標が達成できるように指導しなければならない。
 点字化する際には、「する」という言葉ばかりに気を取られずに、動詞変化をした「しない」「して」「し」「します」「しよう」「させる」「せよ」「すれば」などの言葉にも注意を払うことを忘れてはいけません。
 ここでは、「する」を使う言葉ばかり集めてみたので、ずいぶんブツブツ切れるような感じを持ちますが、実際の文章ではそれほど多くないのでご心配なく。

 12.表記符号間の優先順位の修正
                 <表記法 第4章 第5節 1.p72>
 記号・符号類はそのものの点字だけでなく、その前後のマスあけがとても重要になり、マスあけを含めてセットで考えなくてはいけません。でも、表記符号がいくつも重なったときに、マスあけをどのようにするかとても迷います。その基準を示した項目です。
 第1順位 @句読符の前は続ける。(句点・疑問符・感嘆符・読点・中点)
      A囲みの符号の内側は続ける。(カギ類・カッコ類・指示符類・
       点訳者挿入符・段落挿入符・外国語引用符・発音記号符)
      *段落挿入符は内側の1マスを含んで、3マス符号として取り扱う。
      B波線は前後ろを続ける。
 第2順位 句読符の後ろは、それぞれ必要なマスあけをする。
      (句点は二マス、疑問符と感嘆符は文末は二マス・文中は一マス、
       読点と中点は一マス)
 第3順位 棒線・点線・矢印類の前後ろは一マスあける。
 第4順位 囲みの符号(段落挿入符類を除く)の外側は、他の記号や分かち書きの規則に従って書き表す。
 今までは、この第2順位と第3順位が同列で第2順位になっていましたが、競合するような文例も出てくるため、今回はっきり区別した。
 <例1> さみしい・・・。」 サミシイ□ 
   (第3順位より第1順位の@が優先したために点線の後に句点が続いた。第2順位よりも第1順位のAが優先したために句点の後に続けてカギの    閉じ記号が続いた。)
 <例2> 種をまく。→草を取る。タネヲ□マク□□□クサヲ□トル
   (第3順位より第2順位を優先したので、句点の後ろ二マスあけて棒線を書いた。今回の改訂でこの区別がはっきりした。)