日本点字事情
かわら版

横浜市立盲学校
点字研究部

文責 道村静江
2002年3月1日発行 NO.40

「日本点字表記法2001年版」 改訂内容解説3

 5.促音化した「ツ」の書き方の追加説明
    <表記法 第2章 第1節 6.【注意】p13>
 促音の書き方で墨字で小文字の「っ」を使って書き表すものは、そのまま促音符を使って書き表しますが、「キ」「ク」「ツ」で終わる子音が、次の子音と結合して促音化しているような場合には、少し考えなければいけません。
 「鉄拳(テッケン)」や「復活(フッカツ)」などは、当然「テツケン」「フクカツ」とは読まないから迷わずに促音符を用いますが、次のような場合は、発音上促音化していてもその漢字音でふりがなを付ける場合やどちらの読み方もできる場合があります(詳しくは辞書を引くのが一番よい)。そのようなときは意味の理解を容易にする意味からも、なるべく「キ」「ク」「ツ」と書き表します。
 例1:的確(テッカクと発音するが、テキカクとふりがなを書く)
    三角形(サンカッケイと発音するが、サンカクケイとふりがなを書く)
   <同様の例> 液化水素(エキカ□スイソ) 水族館(スイゾクカン)
         菊科植物(キクカ□ショクブツ)  声楽家(セイガクカ)
 例2:万国旗(バンコッキ、バンコクキ両方の読み方があるが、バンコクキと書くとよい)
   <同様の例> 活火山(カツカザン)  熱気球(ネツキキュー)
         高脂血症(コーシケツショー)
 ★今回の改訂では、「ツ」の書き表し方の説明が加わり、後半の語例三つが加わりました。

 6.数字の後ろに続く助詞・助動詞の扱いの説明追加
    <表記法 第2章 第3節 5.【注意】p21>
 ひと続きに書き表すべき1語中に数字を用いる場合の書き方は、従来のきまりの通りです。もう一度復習すると、前後ろの仮名とは続けて書き表しますが、数字のあとの最初の仮名がア行かラ行であれば、数字と形が同じなので、間に第1つなぎ符をはさんで続けて書きます。
 これはほとんど理解されている重要なきまりですが、うっかりミスで間違えやすいものです。点訳ソフトを使用していると画面上で仮名のつもりが数字になっていて発見しやすいですが、点字器を使う児童生徒にはその指導をしっかりしておかないと発見が難しいです。語例をたくさん提示して注意を促しましょう。ア行・ラ行が付く語例探しをするのも楽しい学習になるでしょう。
   語例:  1位、10円、3億、50音、8里、
          1輪車、1リットル、2塁、1列、1浪 など

 前回の語例の中に「5割入り」というのがありました。「ワ」はア行・ラ行ではありませんが、「ワ」のあとの「リイリ」が数字と同じ形が三つ続いていることから「ワ」を位取り点と考えれば、5,828という数字になってしまうので、つなぎ符をはさむ語例として取り上げられましたが、あまりにも特殊な例なので、今回の語例からははずされました。でも、この言葉が出てきたときだけはつなぎ符を入れましょう。きっと「すごい!」と叫ばれます。

 ★今回は、ア行・ラ行で始まる助詞・助動詞が続く場合、第1つなぎ符をはさむことが【注意】で取り上げられました。今までなかったのが不思議なくらい、考えてみれば当然のことです。
 数字は50音のうち10個しか同じ形がなく、それも上4つの点(@ACD)というとてもわかりやすい場所にあるため、次にくる点字が、下1段(BE)にあれば数字ではないことがすぐに判断されるので(BEに点があることが普通文字に戻るリセット記号になる)、そのまま続けて書くことができます。ただし、ア行・ラ行には気を付けましょうということです。
 しかし、アルファベットは50音のうち26個が使われていて、しかも形が様々です。アルファベットの場合、安易に続けてしまうと判別がつかなくなってしまうので、その後をマスあけすることを原則としています。
 この数字とアルファベットのあとの仮名の使い方が、初心者には混同を招くようです。
 アルファベットの後の助詞・助動詞は必ずマスあけをしていたことから、昔、その昔、数字のあとの助詞・助動詞もマスあけをしていた時代がありました(ア行・ラ行が続くときもマスあけで処理してもよかったのです)。でも、つなぎ符を使うことがすっかり定着してきたので、その使い方を助詞・助動詞にも適用しましょうということのようです。
 前置きが長くなりましたが、数字の後に続く助詞・助動詞も続けることが原則ですが、ア行・ラ行で始まる助詞・助動詞も第1つなぎ符をはさんで続けることが、新しく明記されました。
  例: 5の ノ    3です 3デス
     4へ  4エ   18らしい 18ラシイ