日本点字事情
かわら版

横浜市立盲学校
点字研究部

文責 道村静江
2002年2月22日発行 NO.38

 2001年度も残りわずかとなりました。今年度は6月に漢字資料について2号分を発行したのみで、その後ずいぶん長い間の休止になっていました。
 この間、点字表記について大きな動きがあったのはご存じの通りですが、それをすぐに特集できなかったのは、点字研究部のホームページ作りで過去に持っていた資料の大整理に多くの時間を費やしたからです。
 実を言うと、これまでのかわら版の中に入っている点字表示はすべて切り貼りでした。はさみとのり、ピンセットを持っての作業なんて時代遅れもいいところなのですが、当時の実力ではそれが限界でした。この半年間、点字フォントを入手し、コンピュータ画面上で処理できる技を覚え、画像データに置き換えてインターネットに載せられるようにまで成長し、これからの発行に弾みがつきました。
 そこで、目前に迫る2002年度の指導要領改訂に伴う教科書の大改訂、そしてそれに連動した「日本点字表記法2001年版」の改訂発行と、大きく変わろうとしている流れを受けて、大急ぎで表記法の改定内容を特集したいと思います。
 学年末でお忙しいとは思いますが、どうぞお付き合いください。

「日本点字表記法2001年版」 改訂内容解説1

  1.特殊音の追加 <表記法 第2章 第2節 3. P18>
 今までは次の種類があり、使用頻度によって段階分けされているようです
 ☆1段階・・・・小学校段階までに押さえておきたい特殊音13種
    シェ ジェ チェ ツァ ツェ ツォ 
    ファ フィ フェ フォ ティ ディ デュ
 ☆2段階・・・・中学校段階までに押さえておきたい特殊音20種
    イェ ウィ ウェ ウォ クァ クィ クェ クォ グァ ツィ
    ヴァ ヴィ ヴェ ヴォ トゥ ドゥ テュ フュ ヴュ ヴ

 ★次に挙げる10種は、今までは限定的に使う付加記号として扱われ、これらを知る特定の読者対象や凡例や説明を付けて用いなければなりませんでした。しかし、この時代、様々な外来語や外国語を原音に近い形で書き表したい需要が高まり、今回、正式に他の特殊音と同じレベルで加わりました。しかし、日常的によく使われる音ではないので、生徒によっては習得が難しい場合もあります。
 そのような時はその音になるべく近い音を表す点字を用いることができるので、指導上は時と場合によって使い分けた方がよいでしょう。しかし、一般書物の中では説明なしで使われてくるので、履修させておく必要はあります。
<正式追加> キェ ニェ ヒェ グィ グェ グォ スィ ズィ フョ ヴョ

  2.特殊音の覚え方
 こののようにバラバラに提示されると規則性が見つけにくく、なかなか覚えられません。でも、特殊音といっても全く別の点字を使っているわけではなく、見慣れた拗音系の中に組み込んだり、発音や構成の区分によって整理することができ、前置する点にその区分の鍵があります。
 墨字を読める者はその仮名通りに発音すれば特殊な音を読み書きできますが、点字使用者は墨字の仮名でどう書き表されているかを知ることができません。点字で表記されているものからだけでは発音をイメージできにくいので、拗音系の中に組み込んだ特殊音の発音を含めて、五十音をスラスラ口ずさむように各列の流れを発音練習し、唇の形から何が前置されていて、何の清音を当てはめているのかを理解させるとよいでしょう。

 (1) 開拗音系・・・・Cの点を前置する。濁るときはDの点も加える。
 唇が開いたまま発音する拗音の意味で、拗音系の中の空いている列(イ列とエ列)に特殊音を入れることができる。墨字では、開拗音系の最初の仮名はイ列を使ってあるので、エ列に入り込むことは問題ない。
 イ列に入り込む特殊音(スィ、ズィ、ティ、ディ)の最初の仮名はイ列ではないが、「子音の取り替え」「行の補正」という考え方を取り入れて、開拗音系はイ列が空いているので、添えてある小文字が「ィ」であることからイ列に入れることにした。(スィ、ズィは「ス」がウ列で唇を合わせて発音するからといって、次の項の合拗音系の前置点は付けないので注意しましょう。)
 
    ( )は拗音                    イェ
  (キャ)            (キュ)   キェ   (キョ)
  (ギャ)               (ギュ)                (ギョ)
  (シャ)   スィ    (シュ)   シェ   (ショ)
  (ジャ)    ズィ    (ジュ)    ジェ    (ジョ)
  (チャ)    ティ     (チュ)    チェ    (チョ)
  (ヂャ)    ディ    (ヂュ)           (ヂョ) 
  (ニャ)             (ニュ)    ニェ   (ニョ)
  (ヒャ)            (ヒュ)    ヒェ    (ヒョ) 
  (ビャ)               (ビュ)               (ビョ)
  (ピャ)               (ピュ)               (ピョ)
  (ミャ)               (ミュ)                (ミョ)
  (リャ)               (リュ)                (リョ)

 (2) 合拗音系・・・・AEの点を前置する。濁るときはDの点も加える。
 唇を合わせて発音する拗音の意味で、墨字では最初の仮名にウ列を使い、ア行の小文字を添えて表している。トゥ、ドゥは添えてある小文字が「ゥ」を使ってあるので、「子音の取り替え」の考え方から、ウ列が空いている合拗音系に入れた。
           ウィ           ウェ   ウォ
  クァ   クィ           クェ   クォ 
  グァ   グィ           グェ   グォ 
  ツァ   ツィ   トゥ   ツェ   ツォ
                   ドゥ
  ファ   フィ           フェ   フォ
  ヴァ   ヴィ           ヴェ   ヴォ

 (3)その他 添えてある小文字が「ュ、ョ」の特殊音はCEの点を前置する
その後に「ツ、ユ、ヨ」を書く。「ヴ」は小文字を添えていないので「ウ」の前に濁点のDの点を前置するだけにした。
  テュ   デュ   フュ   ヴュ 
  フョ    ヴョ    ヴ