日本点字事情
かわら版

横浜市立盲学校
点字研究部

文責 道村静江
2001年3月5日発行 NO.34

   点字技能検定試験」特集 Part4

    午後は点字の技術が問われました。

 午後は2時間30分の実技試験が行われました。「点字化技能試験」と「校正技能試験」が行われました。2種類の問題が同時に配られ、どちらを先にやってもいいのですが、どれくらいの時間がかかるのかわかりません。緊張と焦りの混じった気持ちで始めました。
 私は、「点字化問題」から取りかかろうと問題文を読み始め、マスあけの箇所に鉛筆で印を付け始めたのですが、会場ではすぐにタイプライターの音が軽快に鳴り出し、多くの人が私と同じ問題に取りかかったことがわかりました。すぐに打ち出すなんてよっぽど自信があるんだろうなと不安になりました。マスあけの印を細かく打っていたのでは間に合わないかもしれないと、途中から文章を確認するだけにとどめ、私もパーキンスで打ち出しました。
 なるべく訂正をしなくても済むようにと、ていねいにゆっくりと打っていきました。途中で分かち書きの間違いに気づき、メメメで訂正するとかなりの量になるので、見た目が美しくないともう一度そのページを打ち直しました。それが後半思わぬ焦りとなることも知らずに・・・。

   「点字化技能試験」の傾向はこうだった。
 4問が出題されました。各問題の中心となっている出題の意図は何となくわかりました。各問題を分析してみたいと思います。
  「問い1」
 エッセイのような文章で、いわゆる一般的な分かち書きが問われているように思いましたが、どんな内容だったのか全く忘れてしまいました。つまり、それほど迷わずに点訳できたということになるでしょうか。唯一「期せずして」の「して」をマスあけしようかどうしようか迷った記憶があります。結局一語的になっていると判断して続けたような気がします。
  「問い2」
 秋の紅葉の山を素材にしての紀行文だったか論説文だったか、書かれている内容を汲みする余裕なんて全くなく、ひたすら字づらだけを追っていました。とにかく難しい漢字がたくさん出てきてどう読めばいいのか四苦八苦しました。全盲者には録音テープが配布され、それを聞きながら点訳するので、その人たちは正確な読みが保障されているはずなのに、墨字文ではそれができない。試験に対する不公平さを感じ、質問もしてみましたが、無駄な抵抗でした。「思う通りに読んでください」との返答しかもらえず、辞書もなく自分のカンに頼って読むしかありませんでした。どんな漢字が出てきたかというと・・・
 「錦繍の山々」「葛折れの道」「泉鏡花の『高野聖』」「神代から杣が山に入り」「灰白色」・・・いかがですか?辞書なしで読めますか?私は全滅でした。
 実際の点訳の場面では、このような難しい漢字は辞書で調べながらするものですが、これが辞書なしで行わなければならないとなると、よほどの漢字力と文学を読み込んでおく力がないとできないと思いました。またしても国語力を問われ、点字を書く全ての人がこんな国語力を持っているのだろうかと疑問でした。
  「問い3」
 外国語やアルファベットの書き表し方を問うものでした。気象衛星アメダスの話で、論理的な説明文の中に四字熟語もたくさん出てきました。まずは、アメダスの名称「AMeDAS」が書けますか?その後にその由来となった英文が書かれていました。外字符と外国語引用符の使い分けが問われました。略称は外字符を使い、英単語は外国語引用符を使います。大文字だけの略称ならば外字符の後に二重大文字符を打ってアルファベットを続ければいいのですが、「AMeDAS」のように途中に小文字が入っている場合はどうすればいいのでしょう?
正解はたぶん、外字符EaEmeEEdas または、一つずつの大文字の前にEの点を付ける方法ですが、美しさからいったら前者ではないかと思うのですが。 「する」のついた言葉も実にたくさんありました。その前が連用形か連体形かなんてほとんど気にもとめませんでした。四字熟語に「する」がついた言葉のほとんどが二字の漢語のまとまりで区切ればよいと思われましたが、「有効利用する」「急速冷凍し」はどうでしょう?リズムに乗って「有効□利用□する」「急速□冷凍□し」と書いてしまいましたが、後で「一時□停止□する」「一旦□停止する」「十分□休養する」という語例を思い出し、しまった!と思いました。何が違うかわかりますか?
 この「する」の使い分けは非常に難しいのです。「有効、急速、十分、一旦」は形容動詞や副詞なので、その後の「する」は続け、「一時、停止」は名詞だから「する」は切るらしいです。後で辞書を調べてその品詞の区別でやっとわかりました。でも、「有効利用」「急速冷凍」という言葉は日常的に使われ、切ってもおかしくないような気もします。ホントのところはよくわかりません。またしても国語科じゃない悲しさを味わいました。こんなことは生徒だけでなく、一般の日本人の理解を超えていますよね。でも、ご安心ください。来年からは表記の改訂でこんな悩みもなくなります。
  「問い4」
 数字や単位、数式を含んだ文章でした。水の量を計る内容で、「5リットル」という言葉が出てきましたが、第一つなぎ符を使わなくてはいけないことがすぐに出てきますか?aやbを含んだ文字式も出てきました。簡単な数式も出ました。
確か 4a+3b=17 というようなものです。数学科でなくてもこれくらいの数式は書けるようにしておきましょう、ということのようです。

 このような点字化問題が出て、合計5枚程度になったように思います。ページ番号を付けることも忘れてはいけません。
 ここで書き方以外で一番注意を払ったことは、行末処理です。コンピュータ処理に慣れているせいもあって、書きたい一語がちゃんと行末に入りきるのかとにかく気を遣いました。「チン」の音にも集中しました。
 もう一つは、訂正です。メメメの訂正はできれば避けたい。数点の打ち間違いは点消棒でていねいに消しました。無駄な点や汚い消え残りは減点の対象になると事前に注意を受けていたので。
 このように終えた点字化問題、時間は残り半分を大きく切っていました。