日本点字事情
かわら版

横浜市立盲学校
点字研究部

文責 道村静江
2001年3月3日発行 NO.33

    点字技能検定試験」特集 Part3

    いよいよ試験当日になりました。

 1月28日(日)の前日は一日中しんしんと降り続く大雪でした。こんな大雪の中、交通機関は大丈夫だろうか?しかも、重いパーキンスを下げて出かけなければならない足下は大丈夫だろうか?と、不安は尽きませんでした。
 翌朝、晴れはしたもののバリバリに凍った道をパーキンスを下げて恐る恐る歩きながら出かけました。東京会場はお茶の水の明治大学リバティータワー。東京は思ったほどに雪がなく、横浜から重装備で出かけた姿は一人浮いていました。

 全国で648人が受験しました。東京と大阪の2カ所でしか開催されなかったので、地方からの人は前日宿泊だったり、早朝の新幹線で来た人もいたようでした。視覚障害者の人もたくさん集まってきていましたが、きっと雪で大変な思いをしたことでしょう。来ている人をざーっと見回してみると、ボランティアさんもかなりいる様子がわかりました。点字図書館や福祉施設関係職員も多くいたと思います。その中で盲学校の職員はどれくらいだったでしょうか?事前の噂では学校関係者はかなり少ないらしいとは耳にしていましたが。点字を打つための道具は各自が持ち込むことになっていますが、全盲の人は点字盤が多く、ボランティアさんはカニタイプ(ライトブレーラー)が多かったです。重いパーキンスを持ち込んだ人は少数で、その人たちは学校関係者かなと思われました。
 試験は午前中に2時間の学科試験、午後に2時間半の実技試験が行われました。
試験問題はすべて回収されてしまったので、どんな問題が出たのかはもうあまり覚えていませんが、記憶をたどってみましょう。

   学科試験の傾向はこうだった。
 全部で32問ありました。全ての問題が4者択一で、各問題文と選択肢がほぼ点字用紙1枚に収まるように書かれてありました。つまり、点字用紙32枚にもなるボリュームのある問題で、かなりのスピードで読んでいかないと時間がなくなると焦ってしまいました。最後にはほんの数問見直せただけで時間切れとなってしまいました。出題内容は、予告通りの視覚障害者の福祉、制度、教育、国語の全般に渡る問題が広く出されていましたが、あの黄色い虎の巻の本からはほんの少ししか出題されていなくて、各方面への情報に日頃からアンテナを高くしてキャッチし、自分のものとしておかなくては解けないようなものが多かったです。
しかも、四つの選択肢のうち、ほぼ二つまではふるい落とせるのですが、残る二つがどうしても迷ってしまい、カンに頼って解答するものも本当に多かったです。全然わからないものになると「イばかりが続くはずがない、ウが少ないからこれにしちゃえ」などと賭けに出たものもありました。うまく出題するものだと感心しました。
 出されたもののうち、記憶に残っているものをいくつか挙げてみましょう。

○石川倉治が点字を考案するときに工夫したこと。(初めて聞かされたような内 容だった。どこかの本に載っていたんだろうか?)
○ノーマライゼーションの父と呼ばれた人は?(4人とも聞いたことのない名前 で、発音から国もバラバラだったようでした。未だに答えがわかりません。)
○世界で点字に関係した人の功績で正しいものを選ぶ。(シャルル・バルビエ、 アーミテージ、ホール、アウイの4人の功績が書かれてあったが、ハテどれが 正しかったか?)
○日本点字図書館発足当時、点訳奉仕団として活躍した人(こんな単純な出題で はなかったが、後藤静香が正解で、黄色い本に載っていた。)
○民間企業の障害者雇用率の変遷(細かい数字を覚えていないと解けない問題。)
○在宅視覚障害者の数と点字が読める割合(これも数字がたくさん出てきた。)
○JR運賃の障害者割引の実態(迷うのが最後に二つ残った。)
○手引きの仕方(これは簡単だった。)
○4つの制度の中で一番年代の古いもの(点字郵便物の無料化と選挙の点字受験 のどれが古いのか迷った。)
○昭和20年代に実施された法律(4つの法律が並ぶ4グループから選択。16 の法律全てはわからず、4つのうちの知っているものを手がかりに選択した。)
○「私は」と同じ働きを持つ副助詞はどれか。問題は忘れたが、例えば「花が」 「花屋へ」「花も」「花と」(どれもこれも助詞だとしか区別していない。格助 詞・接続助詞・終助詞・副助詞の区別なんて国語の先生にしかわからないよ。)
○「南無妙法蓮華経」の言葉の意味で区切れるところはどこか。(うーむ?)
○「反応」という言葉は「反する」と「応ずる」が組合わさったもの。同じ組み合わ せ方をしているものは?(春雨・銀杏まではしぼれたが、そのうちのどれ?)
○文章の品詞の分け方が4種類。(動詞・補助動詞・形容動詞・助動詞などやや こしいのが、やはり国語の先生じゃないと・・・)

 残念ですが、もうこれ以上思い出せません。約半数は何となくわかったような気もしましたが、残りは全く自信がありません。正解だったらラッキーという気持ちです。これじゃ会と意図するところとかけ離れて情けないですね。
 とにかくこれだけでもバラエティーで内容が細かい問題だということがおわかりでしょう。虎の巻だけ読んで覚えても仕方がないこともわかりました。広く視覚障害者の歴史や情勢に敏感でいなくてはいけないことを痛感しました。
 これだけの問題のうちどれだけ正解すれば合格になるのか、気になるところですが、第1回目ということもあって基準がありません。今回の受験者の出来具合で基準が定められていくのでしょうが、これだけ悩んだのだから、もう一度じっくりと問題を読み、自分の答案と模範解答を見てみたい気がします。