日本点字事情
かわら版

横浜市立盲学校
点字研究部

文責 道村静江
2001年2月14日発行 NO.31

 かわら版も30号に達したところで一息ついていたら、いつの間にか21世紀に突入していて、学校教育の流れも点字表記の流れも2002年の指導要領改訂に向かって大きく動き出しています。本校の教育の有り様も模索を続けながら、この時代の流れにうまく乗って行かなくてはなりません。もちろん、点字の世界も同様です。この「かわら版」も刻々とその流れを追っていきたいと意を新たにしています。
 さて、今回は2001年1月28日に行われた「点字技能検定試験」について特集したいと思います。

  点字技能検定試験」特集 Part1

 点字技能検定試験はなぜ行われるようになったか?

 1.目的
 点字に関する卓越した知識・技能を有する方に対して資格を付与することにより、点字関係職種の専門性と社会的認知度を高め、合わせて点字の普及と点字の質の向上を図り、視覚障害者に的確な情報を提供することを目的とする。

 2.どこが母体に実施されたか?
 日本盲人社会福祉施設協議会(日盲社協)です。
 日盲社協とは全国の210余りの福祉施設が結集した組織で、その呼びかけで教育団体、福祉運動団体、点字専門団体がその必要性を強く感じて応援し、点字技能認定制度が発足できたのです。

 3.どのような経緯でこの制度が発足したのか?
 点字技能についての全国レベルでの客観的評価は、現在どこでも行われていません。唯一、日盲社協が18年前から毎年実施している「点字指導員資格認定講習会」というのがありますが、事前に点訳・校正問題の試験提出があり、一定のレベルに達している人がその講習会に参加する資格を得ますが、講習会は3日間の短いもので、その内容は基本的な視覚障害一般の講義内容だったように記憶しています。私も参加しましたが、大阪での3日間で何か成果があったという記憶がありません。「点字指導員認定書」というものはもらいましたが、何の役にも立っていない状態です。ですから、現時点では点字技能そのものを問う基準というものがなく、ひたすら自己研修に頼っているのが実状です。
 そこで1998年頃から点字技能を評価できるような制度を作れないかという模索が日盲社協内で続き、関係各方面の協力を得て日盲社協が中心となって実施しようという運びになったのです。
 モデルとなったのは、すでに国家試験となって実施されている手話通訳士だそうです。国家試験にまでこの制度が昇格すれば、社会的認知度も高く、有効利用される資格になるかもしれません。

 4.この制度の目指すところは何か?
 目的にも示されていますが、もう少し具体的に表すと・・・
 点字技能認定制度運営委員会 委員長 高橋実氏は次のように言われています。
 @視覚障害者の生活文字としての認知を得ている点字が、使用者の減少と点字離れの中で、点訳ボランティアの増加という実態と併せ、点字を晴盲共通の文字として社会に広げる。
 A点字の読み書きが性格、迅速であるだけでなく、点字を含めて視覚障害者の教育、職業、福祉に関わる基礎的知識を習得して、視覚障害者への理解を深める。
 B一世紀以上の歴史を持った点字は選挙権や署名など幅広い公的市民権を得ているが、今後益々広がるであろう情報革命の中でもアクセスの有効な手段として重視されるよう定着させる。
 C近い将来、点字技能士が手話通訳士のように国の認知を受けられるように実績を積み重ねていく。
 D点字技能士が、盲学校教職員や盲人福祉関係施設職員の資格として重視されるようにする。
 E点字技能士が大学や短大・専門学校等での点字指導者として、速やかに認められるような資格にまで引き上げる。
 F将来、点字技能士に、より専門的な点字技術を習得するための再教育を行う。
 G点字技能士が有能な点字校正者として、また点訳者として、公的機関などに採用されるようなシステムを構築する。

 以上のような熱い想いと将来的構想の上にこの制度が誕生しました。
 国家試験となるまでにはまだ実績と年数が必要でしょうが、近年需要が急速に高まってきている地方自治体の広報の点訳や公的な点訳業務、さらには福祉啓発の授業などが全国の学校で取り入れられていて、その講師などとなるとある程度の実力と資格が認められている人を採用したいという動きが出てきます。それらの対応も視野に入れての制度だと思います。
 ですから、受験料1万円を取り、資格登録料としてさらに3千円がかかり、免許とまではいかないまでも、「認定書」としてその効力を発揮する方向で考えているようです。受験資格も「検定試験実施の年度内に満18歳以上となる者」とし、盲学校の高等部の生徒が受験して合格すれば、その資格で就職するのに有利になるようにしたいという思いもあるようです。

 このようにスタートした第1回目の試験は、試験問題の内容にしろ、基準にしろ、何もわからない状態でした。何事も経験と私も受験してみましたが、まあ、大変だったこと!その辺の四方山話は山ほどあります。この話は、次号に。