日本点字事情
かわら版

横浜市立盲学校
点字研究部

文責 道村静江
2000年7月19日発行 NO.30

 自動点訳ソフト「Extra」の紹介と考察を簡単に考えていましたが、前号だけの内容ではますます混乱を招くだけだと思いました。そこで、どうしたらうまく使いこなせるかを私の知っている範囲内でお知らせしてみたいと思います。
(使ったのは2回だけで、その少ないデータの中から傾向を探っているので、必ずしもそうとは言えない場合もありますが、そこは各自でご検討ください。)

   自動点訳ソフト「Extra」を使いこなす方法
 .文書の種類としては、日本文が長く続いているものの方が適しています。
見出しや記号がたくさんあったり、箇条書きだったりするのは後始末が大変であることを覚悟しておいた方がよいです。行事の実施要項などはその典型例です。
 .点訳する文書を選択したら、ワープロで書かれた墨字文書をそのままエキストラにかけるのはやめましょう。点字に直しやすいように墨字文書を加工しなくてはいけません。それには次のような注意が必要です。
 (1)表があるものは、やめておいた方がいいでしょう。後始末が大変になります。図があるものなんて問題外です。あっさりあきらめてください。
 (2)罫線は全て消去しましょう。罫線は点訳されませんが、罫線の入っていた箇所が空欄になるので、言葉がとぎれたり変なマスあけになります。文字飾りなどは問題がないようです。
 (3)見出し(タイトル)の行頭のマスあけを、その大きさによって統一しておきましょう。点字では墨字文書のマスあけ数の2倍になります。段落のところは作文のように行頭1マスあけに。2マスあいているものは全て見出しと判断されますので注意しましょう。
 (4)行にセンタリング、右寄せなどの加工してあるものは、解除しておいた方がいでしょう。センタリングはいいとしても、右寄せも全て大きなタイトルとみなされ、8マスあけになります。
 (5)墨字文書の見やすさのために、文章は続いているのにインデックス(行頭を数マスあけて文字を揃えること)をとっている場合は、とんでもないマスあけの点字になってしまうので、解除して全て行頭をつめた書式にしましょう。
 (6)特殊な記号は、できるだけ使わないこと。後で直すのが大変になります。
 (7)以上の作業を終えてから、点訳のための加工した文書をテキスト形式(.txt)で保存します。
   <自動点訳ソフト「Extra」の使い方は省略します。>

 3.いよいよ見出し、記号、符号の修正作業です。
 (1)まずは見出しのマスあけに注意して修正しましょう。点字では見出しは最大8マスが限度です。文書全体を見通して見出しの大きさ(マスあけ)を決めましょう。見出しが2行に渡るものは、見事に処理してくれます。(2行目以降は2マス落とす。)
 (2)見出し記号は、記号の後のマスあけの数も問題なく処理してくれます。
 (3)番号の書き方で、墨字では(1)と@は区別してよく使われますが、点字ではどちらも( )となってしまうので区別が付きません。その時は@は点字の第1カギを使うとよいでしょう。墨字で(1)が使われていなくて@だけの時はそのままでいいです。だから、墨字文書を作るときにその番号の使い方にも注意が必要です。
 (4)箇条書きの前によく付ける・(クロポチ)は、中点の点字記号になってしまいます。これは、使う意味合いが違うので削除しましょう。どうしても箇条書きの前に記号を付けたければ、星印を使います。その時の注意は、第1星印、第2星印とも行頭2マスあけ、星印の後は1マスあけです。文中に星印を付けた場合は、第3星印に書き換える必要があります。
 また、*(アステリスク)や※印も墨字文書では箇条書きの印としてよく使われますが、Extraの場合は星印に換えてくれる場合もありますが、*が情報処理記号になっていたら、これは絶対に星印に書き換えてください。その他の★●◆■▲などの記号は、点字の伏せ字記号になっていたりしますが、意味合いが違うので書き換えが必要です。*や※が注意を促す意味で使ってあれば、「チューイ」と点字で書いてあげればいいのです。星印の乱用は避けましょう。
 (5)墨字で小見出し符的に使われる:(コロン)は、点字では第2小見出し符となってしまいます。第1小見出し符に書き換えてください。
 また、墨字では小見出し符的に・・・(点線)や−(棒線)がよく使われますが、点字の点線や棒線は、感情の余韻、時間的隔たり、漠然とした省略などに使われるので、これは第1小見出し符に書き換えるべきです。Extraの点字では点線が中点の連続になったりで、とても変な形になります。
 (6)日付や時刻の略記は必ず書き直す必要があります。日付にピリオドが入ると、小数点の数字になり、スラッシュが入ると分数か情報処理用点字になってしまいます。時刻はコロンの後にマスあけしてまた数符を書いてしまうので、完全に違います。郵便番号や電話番号にハイフンが入っていれば、かなり正確に書いてくれます。
 (7)カッコの使い方にも注意しましょう。墨字には様々な形がありますが、点字には3種類しかありません。第1,第2、ふたえカッコの使い方を十分に理解して、墨字の記号をそれらの3種類の中に当てはめましょう。よく使われる<>のカッコは数学の不等号と判断してしまいますが、ややこしいことにそれはまた点字の星印と同じだから、墨字画面に直すと星印が出たりして、なおややこしくなります。好みで〔 〕[ ]{ }《 》【 】などをいろいろ使いたくなりますが、それをExtraにかけると、カッコ類・カギ類・指示符類など様々な形と対応してきます。当然使う意味合いが違うので、それらを第1カッコとして使っても差し支えなければ( )に換え、区別したいときには第2カッコを使います。
 
 4.さあ、文章の点検です。
 (1)漢字の音訓の読み方には時々間違いがあります。仕方ありませんね。
 (2)連濁を伴う漢字熟語には間違いが多いです。しかも、濁っていなくてマスあけをしてありますので、濁らせて続ける作業が必要です。
 (3)漢数字を使った言葉は数字で書き表してあるものが多いので、時と場合に応じてひらがなに直さなくてはいけません。(四季の森→4きの□もり)
 (4)数字で書いてあっても、和語読みをさせたいときは書き直します。(1マス→ヒトマス、1日→ツイタチ)
 (5)単位やアルファベットが入っている言葉の後または数字の後には注意が必要です。その後にマスあけや第1つなぎ符など必要に応じて挿入しないと日本語に戻っていないことがあります。アルファベットの略称や英単語などは外国語引用符を使ってあることが多いです。いずれにしても、数字やアルファベットを含む語の書き表し方をよく知っておかないとExtraに翻弄されてしまいます。
 (6)分かち書きは概ね信じてもよさそうですが、細かいところでは間違っているものもあります。それを修正するためには、しっかりとした分かち書きの理論を持っていることが必要です。
 
 こうして見ていくと、「Extra」を使いこなすには、やはり点字のきまりを十分に習熟していることが必要不可欠になってくるのを痛感するでしょう。
 盲学校の職員なら、安易に「Extra」に頼りすぎるのはよくありません。うまく使いこなすためには、やっぱり点字の表記を勉強してください。
 行き着くところ、結局こういう結論に達しました。