日本点字事情
かわら版

横浜市立盲学校
点字研究部

文責 道村静江
2000年6月28日発行 NO.28

  『日本点字表記法 2001年版』改訂原案骨子 part3

 9.大問題の分かち書き「2拍・3拍」
 これは、解説しはじめたらキリがありませんし、何をどう書いていいのかわかりません。だけど、総会では大半の時間がこの問題の議論に当てられました。
 点字委員会が1990年の方針で打ち出したことですが、いまだにすっきりしない問題を抱え、全国から寄せられる疑問に頭を悩ませ、何とかいい方法はないかと苦慮していることが本当によくわかりました。
 文法用語や和語・漢語といった難しい表現は用いないでなるべく易しい言い方で処理したいという意向、だけど、拍だけとらえられて単純に扱ってほしくはない、語の持つ意味合いや語が熟して一語的になっているかどうか、言葉の意味を大切にしながらもどこで区切ったら点字を読む際に意味が取り易いのかなど、十分に考慮して分かち書きをしてほしいという願いが、切々と伝わってきました。
 しかし、表記法に規則として載せるにはやはりあのような言い回しのくどい文面にならざるを得ない。あの文面の裏にどのような意味が込められているのかが少しわかったような気がしましたが、とても簡単に解説できる代物ではないので、ここには書くことができません。
 また、解説の後に「例」がありますが、あの例の一つ一つ、あるいはその配列にもちゃんと意味があるのだということがわかりました。あの例が何故そうなっているのかをきちんと見抜き、そこから他の語にも転用して、だからこういう分かち書きになるのかと理解・応用できるのは至難の業だと思いました。まさに「知る人ぞ知る!」の世界です。
 そこで思いました。以前から「表記法」の解説がとても分かりづらいという批判の声がありましたが、あの表記法はいわゆる学習指導要領の原文のようなものです。一般の者が活用するには「学習指導要領解説」のようなものがほしいと思いました。点訳ボランティアの高度な点字技術はその講師の指導に裏付けされていると思いますが、盲学校の教師には講師はいません。あの表記法があるだけです。その表記法をどう読みこなせばいいのか、やはり解説が必要だと強く思いました。他の盲学校はどうしているんでしょうか?だから、盲学校の先生たちの点字技術は低いと言われ続けているのです。
 さて、前置き(いや、愚痴かな)が長くなりましたが、ここでの問題点をかいつまんで書くと次のようなものです。
 ・一語として熟しているかどうか。(この「熟している」の判断がまた難しい)
 ・自立可能な部分と副次的な要素をちゃんと見分けられるかどうか。
 ・意味の理解を助けるとはどういう場合を言うのか。
 ・同じ2拍の言葉でも、語頭にある場合は区切ってあげた方が意味がはっきり分かるので読みやすい(これも意味の理解を助けるということ)が、語尾にある場合は言葉の流れで判断がつくので区切らなくていいだろうということ。
 ・和語(訓読み)と漢語(音読み)では同じ拍数でもその扱いが異なること。
 ・一般用語で続けた2拍のきまりでも、医学用語となると意味の理解を助ける
  ためには区切った方がはるかに読みやすいということから、一般用語と医学用語を区別して取り扱うべきではないかということ。
 など、ざーっと私の理解した範囲内でも問題が山積していることがおわかりのことと思います。まだまだこの拍の問題にはこだわっていく必要があると思います。どうか点訳の際には分からないながらもこだわり、疑問に思い、ぜひ口に出して話題にしてほしいと思います。

 10.中点の扱い
 現行では中点の扱い方をそれほど取り上げていませんでしたが、墨字文書の中に頻繁に使われてくるようになった中点を、点訳する際に留意すべき事項として取り上げます。
 中点はいろいろな目的(同格で並ぶ区切り目、言い換えの語の間の中点、補足的説明など)で安易に使われていますが、点字では多用すると読みにくくなるので、最低限必要なところにとどめることが必要です。また、中点を使用することで非常に紛らわしくなる場合には使ってはいけないことになっています。

 11.その他
  ・古典と漢文の章が新たにそれぞれ加わります。
  ・情報処理用点字は参考資料として付録に載ります。
  ・暫定的に改訂された点字科学記号は、2000年秋に発行予定ですので、表記法には数学的・理科的分野は載りません。
 以上、3号にわたる「第36回 日本点字委員会総会」の参加報告でした。