日本点字事情
かわら版

横浜市立盲学校
点字研究部

文責 道村静江
2000年6月28日発行 NO.26

 2000年がスタートして、ずいぶん長い間お休みをしてしまいました。
昨年度、点字の書きについて、つまり分かち書きについて長いシリーズを組み、それが一段落したところで次に何に取りかかろうかとずっと思案していました。
 点字の読みについても書いてみたいけど、そう簡単には終わりそうにないし、
点字の学習環境についても書いてみたいけど、単発すぎる。職員がよく利用する自動点訳ソフト「Extra」の注意点も特集してみたいが、私自身があまり使ったことがないので十分に使いこなせていない。・・・などなど、思案にくれていました。でもどんどん時が経っていくばかりなので、思い切ってまた書き始めることにします。今年度もどうか読んでください。

 さて、まず手始めは、6月10日11日と大阪で開かれた「第36回日本点字委員会総会」に出席してきましたので、その情報からお知らせしたいと思います。
 今回は、来年秋に改訂発行される予定の『日本点字表記法 2001年版』の原案の検討でした。さすがにどのように改訂されるのだろうと関心のある方が多く、たくさんの一般参加者を迎えての総会でした。
 どのような改訂原案が示されたのか、かいつまんで報告します。

  『日本点字表記法 2001年版』改訂原案骨子 part1

 1.特殊音記号の位置づけ
 現行では、必要に応じて用いる付加記号として、下記に示す10種類の限定的に用いてもよい特殊音点字が別枠で示されています。
 これらは、一般の点字使用者が全ての記号を理解しているとは限らないという前提の下に、付加記号を理解していると思われる特定の読者を対象とする文章の中で用いるとか、適切な場所に凡例や注あるいは説明などを付記した後に、これらの記号を用いるという付加記号の位置づけでした。
 しかし、時代の流れで外来語を書き表すのにこの10種も必要となってきたことから、正式に特殊音表の中に組み入れることにしたのです。

         キェ   ニェ   ヒェ

        グィ   グェ   グォ

        スィ   ズィ   フョ   ヴョ
 
 2.1.の特殊音点字と同様な理由から、今まで付加記号として位置づけられていた伏せ字、マーク類の符号、発音記号符なども付加記号扱いをしないで、正式に一般の表の中に組み入れることになります。
 ただし、その使い方については注意が必要で、墨字の見た目で同じ記号が使われていても、その意味に当てはまる使い方をしなくてはいけないのです。例えば、墨字の記号に見出し記号としてよく○や*が使われていますが、その形に合わせて伏せ字の○を使ってはいけませんし、特殊文字のアステリスク*を使ってはいけないのです。これら場合は、見出しとして使われていれば行頭2マスあけに替えるか、第1または第2星印を利用し、*のように文中の注記として使われている場合には、第3星印か文中注記符を使用します。
 このことは現行でも言えることで、よく間違えている人がいますので十分に注意してください。

      伏せ字の○      伏せ字の△      伏せ字の□

      伏せ字の× (数字の伏せ字にも用いる)    その他の伏せ字

      %(パーセント)        &(アンドマーク)

      #(ナンバーマーク)     *(アステリスク)

 3.促音符を用いない書き表し方
 「基本的な仮名遣い」の項で、次のような「注意」が新設されます。
 「つ」で終わる字音が次の字音と結合して促音として発音されていても、意味の理解を容易にする場合には、促音符を用いずに「ツ」と書き表してもよい。
    例:カツカザン(活火山)  コーシケツショー(高脂血症) 
      ネツキキュウ(熱気球)

 4.ワープロのテキストなどで、墨字の表記を説明する場合にぁ、ぃ、ぅ、ぇ、ぉ、ゃ、ゅ、ょなどが、小文字であることを示さなくてはいけない場合が出てきます。その時には小文字符のCDの点を前置して書き表します( *)。しかし、小文字の「っ」は小文字符を前置すると拗濁音のぢゅに誤読されるので、常に促音符で書き表します。また、小文字符が使えるからといって、拗音や特殊音を表すために使ってはいけません。

 5.最近よく使われるアルファベットで書き表された略称の間に、ハイフンやスラッシュがはさまれている場合、ハイフンは第1つなぎ符を用い、その後は改めて外字符を添える。スラッシュはの記号を用い、その時の外字符は最初の一つだけとし続けて書き表すが、スラッシュの後に大文字符や二重大文字符を改めて前置する。
   例:  MS−DOS    

        DOS/V