日本点字事情
かわら版

横浜市立盲学校
点字研究部

文責 道村静江
1999年11月1日発行 NO.22

 今日は「点字の日」です。109年前の今日、1890年11月1日、石川倉次氏がフランスのブライユ点字を基に「あいうえお」の50音に翻案し、日本の点字として認められたからです。私たちは100年以上に渡ってこの点字という文字のすばらしさの恩恵にあずかっているのです。
 小学4年の国語の教科書に「手と心で読む」という教材があります。その中に、次のような文章があります。
『点字には不便なこともいくつかあります。<中略> けれども、これくらいの不便は、文字をもつ喜びにかえられるものではありません。』
 もう一度、点字の良さを見直す機会にしてみてはいかがでしょうか。

 さて、前号で【複合動詞「する」に関する新提案】を掲載しました。
 それに対して、点研でも校内の意見を集約して、日本点字委員会に本校の意見として提出しておきました。紹介しておきます。

    『複合動詞「する」』の点字表記改定案に対する意見

1.現行の問題点                       
 @今までの文法を主とした考え方に基づく「する」の分かち書きは、児童・生徒への説明は非常に難しく、その説明に必要な文法が出てくるのは、中学生段階で、しかもその文法さえも理解しにくい生徒が多数いること。
 A教師の中でも、文法を持ち出されるとお手上げという指導者も多く、国語科や一部の教師だけが理解している例も多く、指導者間への浸透が悪いこと。

2.賛成の意見                        
 @複雑なルールよりも、単純明快なルールが誰でも指導できて、小学部段階の文法を知らない児童にも、わかりやすく説明できる。
 A文法を持ち出す解説だと中学生以上でしか対応できず、しかもその文法分野の指導時数がだんだん少なくなってきている現在の傾向では、ますます理解して書ける生徒の割合が減ってくる。   
 B書くときに、「する」が出てきた場面で、その前の修飾語はどうだったかと前に戻って考え直さなくてもすむ。
 Cプツプツ切れる傾向になる分かち書きだが、触読の場合、初心者にとっては切れている方が意味が取りやすいし、熟達者は慣れの問題ですぐにクリアーできると思われる。
 D自動行末処理のある点訳ソフトでは、「する」が区切られていないときには、最後の一文字が入らないために、長い文節が行移しになり、行末が必要以上に空いてしまうということも度々ある。許容の範囲で「する」などの前では行移しをしてもよいとなっているが、自動行末処理で移ってしまったものを書き直す手間をかけるケースは非常に少ない。
  また、点字使用の初心者には、できるだけ規則に忠実にしたいという意向から、許容の範囲の複合動詞「する」などの前での行移しは避けたいために、行末が必要以上に空くケースも多い。   
  さらに、点字タイプライターや点字盤などの手書きの場合、行末の行移しの予測がつきやすい。

3.反対意見                        
 @「する」をすべて区切るとなると、マス数が増えるので、マス数を増やす方向での改訂は反対である。
 A「する」の問題でこのような改定案を作るのなら、「2拍・3拍」の非常にわかりにくい問題も何とかして欲しい。

 さて、前記の反対意見の中に出てきた
「2拍・3拍」の問題とは一体何でしょうか?
 これも悩みだしたらキリがなく、言われるとおり難しい問題です。
「杉並木」は2拍だから続け、「桜□並木」は3拍だから区切るなんて何だか変!
「スクールバス」は続けるのに、「バス□停留所」は区切るの?
「西階段」を続けるのはわかるけど、「東階段」まで続けるのはどうして?
「生徒会長」は続けるのに、「会計□課長」は区切るのはどうして?
どちらも「生徒会の会長」「会計課の課長」となるんじゃないの?
 などなど・・・・うーん、悩みだしたらキリがない。この問題もはっきりケリを付けてほしいですね。

 うまくケリを付けられるかどうかはわかりませんが(だって、日本全国が悩んでいるんですもの)、次号のかわら版で特集します。