日本点字事情
かわら版

横浜市立盲学校
点字研究部

文責 道村静江
1999年7月12日発行 NO.20

    <前号からの続きです。今回はとても間違えやすい「補助動詞」と、
     難解極まりない「する」の切れ続きの登場です。>

8.「こそあど言葉」は、ほとんど区切ります。
 ・でも、こそあど言葉の後に助詞・助動詞がくる場合は続けます
   例:どうでしょう、どのように、どのくらい、どうなのか、それらしい
 ・でも、1語になりきっている言葉は続けます。<便利帳12p(注意)>

9.「補助動詞」って、よく出てきます。区切ります。
  ・「補助動詞」とは、本来の意味を失って、他の語につき、補助的な役割で用いられる動詞。「て・で」の後に続くものが多く、ひらがなで書くものです。 <便利帳12p>
  ・言葉のリズムとして、その間に半ポーズぐらいの切れ目があるのが目安になります。
  ・補助動詞が省略されて、前の語とつまって、音に切れ目がないときには、続けます。<便利帳13p(注意)>

10.「ない」の書き方:いろいろで複雑。<便利帳14,15p>
 ・「ない」が形容詞の場合は、区切る。
 ・「〜ない」を「〜はない」と置き換えられる場合は、区切る。(補助形容詞)
 ・動詞の後に続く「ない」は続ける。(打ち消しの助動詞)
 ・「〜ない」が一語になりきっている場合は続ける。
 ・「〜ない」「〜なさい」が「い」の省略形であれば、続ける。
 ・「〜なさい」が「し」の省略形であれば、区切る。
 ・いずれにしても、音のリズムで区切るものには間に半ポーズあるような気がします。

11.形容詞「〜く」の後の「なる・して」などは区切る。<便利帳15p>
 ・ただし、消滅を表す複合動詞の「〜くなる」「〜くして」は続ける。

12.「する」の書き方:これはとっても複雑!<便利帳13p>
 @「する」は動詞なので、活用変化(サ行変格活用)があります。「しない、させる、される、します、しました、したら、して、すれば、しよう、しなさい、せよ、しろ」などは、全部「する」の仲間です。

 A動作などを表す名詞に「する」が続く場合は、続ける

 B「する」を伴う名詞の前が、連体修飾語のときは区切る
 つまり、「連体修飾語+名詞」でまとまってしまい、その後に続く「する」は複合動詞にはならずに独立した動詞になるので区切る。
   例: 短い□旅行□する   ハードな□練習□する   数学の□勉強□する
      昼寝の□邪魔□する   君の□噂□してたよ 

 C「する」を伴う名詞の前が、連用修飾語のときは続ける
 つまり、連用修飾語は「名詞+する」という複合語全部にかかるので、「する」は続ける。
   例: 短く□旅行する   ハードに□練習する   数学を□勉強する
      昼寝を□邪魔する  君を□噂してたよ 
   理解に苦しむ例: 遊びの□邪魔□する□人  君の□信頼する□人
               この□興奮させる□文章
    (「君の」や「この」は次の言葉にかかる連体修飾語ですが、これらを含めてもう一つの連体修飾語      である複合動詞を飛び越えて次の名詞にかかっているので、十分に文脈の中で役割を考える。)

 D内部にマスあけを含む複合名詞の後に続く「する」の前は、区切る
   例: 社会□生活□する   電話□連絡□する   奉仕□活動□する
       ビタミン□注射□する   ガソリン□補給□する   直接□選挙□する
   *一時□停止□する(⇔一旦□停止する)・・・「一時」は名詞で「停止」にかかるが、
    「一旦」は副詞で「停止する」にかかる。
    「一時停止」という複合名詞はあるが、「一旦停止」はない。
   *強制□処分□する(⇔断固□処分する)・・・「強制」は名詞で「処分」にかかるが、
    「断固」は副詞で「処分する」にかかる。
    「強制処分」という複合名詞はあるが、「断固処分」はない。
     <国語辞典を調べると、どんな働きをする言葉かが書いてある>

 E「する」の意味が独立している場合は、前を区切る
 これは、最近増大している動作を表す名詞以外にも、何でも「する」をつける傾向があるものに、歯止めをつけようとする動きである。
   例: お茶□する   青春□する   科学□する   赤い□顔□する 

 F副詞に「する」が続く場合は、区切る

13.分かち書き練習問題
 A.助詞・助動詞・形式名詞
  @5個くらい  A言ったものだが  B言われてみれば  C考えながら 
  D聞いたそうだ  Eさみしいものは  F何人もの  G話し合うように
  H夢のごとし  I読みたがる  J知られますまい  Kいくたびか
  L見るたびに  M幸せそうに  N天使みたい  O風邪のようだ
  Pこんなはずでは  Q今回ばかりは  R人気らしい  S二つほど
 B.こそあど言葉
  @こういう  Aそうしたら  Bそうして(そして)  Cどうすれば  Dどうですか
  Eどうして(なぜ)   Fこの間(先日)  Gこの間に  Hこの度  Iわが家 
  Jわが友  Kある日  Lそのくせ  Mどれくらい  Nこのように
  O何だったんだろう  Pこの程  Qどのみち  Rこれらしい  Sそのうちに(やがて)
 C.補助動詞
  @行ってくる  Aほっといてくれ  Bほっとく  C安心している  D聞いてみる
  E増えてくる  F違ってきます  G遠慮してしまう
 D.「〜する」
  @ほんのりした  A運動したいんだ  B協力したい  C申し上げます
  D運動させよう  Eスポーツしませんか  Fはっきりさせよう  Gゆっくりしなさい
  H運動しなさい  I勉強する  J勉強をする  Kバレーボールしたい
  L顔つきする  M勉強できる  N参加しましょう  O美しくしてね
  P急いでしたら   Qいくらする  Rお休みする  Sヨ−ロッパ化する
 E.文脈を見ての「する」(高度な問題です)
  @恐い顔する  A元気な声して  Bかかる失態したのなら  Cすごい運動したよ
  Dすごく運動したよ  E服を洗濯してください  F服の洗濯してください
  G全力投球する  H違法なストする  Iこれをメモする  J額に汗する
  K一般参加する  L極力参加する  Mみんなで参加する
  N敵の攻撃しやすい目標

 【解答】(チェックポイントでマスあけするもの)
    A.ELP  B.@ACGJK  C.@ACDEFG
    D.@CFGJLMOPQR  E.@ABCFGHK