日本点字事情
かわら版

横浜市立盲学校
点字研究部

文責 道村静江
1999年7月12日発行 NO.19

 夏休み目前です。たっぷりと研修期間のとれる夏休み。今年はどんな夏にしようかと、思いを巡らせておられるのではないでしょうか。始まる前はこんなことしよう、あれもしたいと思っていたのに、終わってみれば何ほどもできなかったということもしばしば。そんなことのないようにどうか有意義な夏にして下さい。
 といって、こんな「かわら版」出すのも気が引けますが、6月の新転任オリエンテーションの点字講習で使用した資料の紹介をしておかないと、私の夏も来そうにないのでおつきあい下さい。
 今回は、大切な大切な「分かち書き」のPART1です。手引書に載っている文法用語に苦労していませんか?何とか今持っている文法知識と自分の日本語感覚で、分かち書きの感覚を身につけていただきたいと思います。

    『分かち書き 自立語と付属語』
       「新点訳便利帳」 第2章<その1>を参考に

1.なぜ分かち書きが必要なのか?
  ・漢字仮名交じり文は、漢字が語の区切り目を表すために、分かち書きはしていません。ところが、点字は表音文字ですべてカナで書かれているので、語の区切り目を明らかにする必要があるのです。
  ・基本的に点字の書き方は「文節分かち書き」をとっています。でも、長い複合語などになると区切り目がわかりにくく理解しにくいので、「読みやすく、書きやすく、わかりやすく」をモットーに、従来の経験を基に点字独自の規則が 生まれました。
  ・分かち書きは、意味を理解しながら速く読むことができるようにするために行うもので、文の単位毎に区切ることによって、分かち書きを手がかりにそれぞれの語の理解はもとより、文節と文節の関係を明らかにし、文全体の意味を速 く理解できるようにするのです。
  ・長い歴史の中で、分かち書きの方法も変化してきました。そして現在は、意味のまとまり毎に細かく区切る方向で進んでいます。表音文字ばかりが並んでいる点字の場合、区切ってあるものを読みながらつないでいく方が、続いているものをどこで区切るのかと考えながら読むよりも、速く意味を正確に読みとる ことができるのです。

2.中学校程度の国文法は理解していますか?
  ・点字の規則には、文法用語がたくさん出てきます。国語科の人ならお手の物でしょうが、それ以外の人には日常使っている日本語でありながら、文法を出されるとお手上げという人が多いのではないでしょうか。私もその一人です。
  ・中学生に戻った気分で国文法をひもといてみるのも一つの手ですが、自分の感覚として繰り返し使うことによって身につけることも可能だと思います。また、 国語辞典を引き、品詞の確認をしていく方法もあると思います。いずれにしても、基本的な文法用語には慣れておいた方がよいでしょう。
  ・ちなみに、中学校の国文法では、「自立語か付属語かの区別、活用するかしないかの区別、体言か用言かの区別、品詞の種類の判断」などの理解を目指しているようです。

3.よく出てくる文法用語のチェックをしておきましょう。
  ・「文節」とは、文を意味がわかりにくくならない程度に短く切ったひとまとまりで、文を組み立てる単位である。つまり、文節は付属語だけでは作ることが できない。
  ・「自立語」は単独で文節を作ることができる語で、動詞・形容詞・形容動詞・名詞・代名詞・副詞・連体詞・接続詞・感動詞がある。
  ・「付属語」は、他の語の後につく語で、助詞・助動詞がある。
  ・「接頭語・接尾語」は、単語に似ているが、単独では用いられず、必ず別の単語と一緒になって一つの単語を作る小さい言葉である。付属語であって、造語要素として取り扱われる。接頭語や接尾語がついた語を派生語という。
  ・「連体修飾語」は体言(名詞・代名詞)を含む文節を説明する語で、「連用修飾語」は用言(動詞・形容詞・形容動詞)を含む文節を説明する語である。

4.分かち書きの第1原則
  「自立語は単独で文の単位となるから前を区切り、助詞や助動詞は単独で文の単位とはなれないので自立語に続ける。」

5.文節分かち書きのすぐわかる方法
  ・間投助詞の「ね」や「さ」を挿入して、文の意味が変わらなければそこで区切るとほとんど問題はない。

6.助詞・助動詞の種類を覚えましょう。<便利帳10p>
       おもな助詞                       
  か  が  から  くらい  けれど  こそ  さ  さえ   しか  すら  だけ  だに
  たり  つつ  て  で   とも  ながら  など  なり  に  ね  の  ので   の
  に  のみ  は  ばかり  へ  ほど  まで  も   や  よ  より  を
                                   
       おもな助動詞
   ごとし  させる  ず  せる  そうだ  だ  たい   たがる  たり  です  なり
  ぬ  べし  まい  ます  みたいだ  よう  ようだ  らしい  られる  れる 

7.形式名詞って何ですか?<便利帳11p>
  ・実質的な意味が薄れた名詞のことを言い、「こと・もの」のように抽象的な意 味を表し、常に連体修飾語をつけて用いられるもので自立語です。でも、同じ 言葉や漢字でも接尾語や助詞になっている場合もあり、よく区別がつきません。
  ・邪道かもしれませんが、形式名詞は漢字で書き表されることが一つのヒントか もしれません。<便利帳11p(参考)>
  ・形式名詞の種類を覚え、それが文脈によって接尾語や助詞になっている場合を 感覚でつかむしかないようです。また、同じ言葉や漢字でも読み方によってマ スあけが変わりますので、注意しましょう。<便利帳11p(注意)>
  ・「ようだ」「らしい」「みたい」「ごとし」伝聞の「ようだ」は形式名詞のよう  ですが、助動詞として取り扱われることが多いので、続けます。

   おもな形式名詞
 うえ(上)  うち(内)  かぎり(限り)  こと(事)  すえ(末)  せい(所為)  せつ(節)
 たび(度)  ため(為)  てん(点)  とき(時)  とおり(通り)  ところ(所)  はず(筈) 
 ほう(方)  ほか(他) まま(儘)  め(目)  もの(物)  ゆえ(故)  よし(由)  わけ(訳)