日本点字事情
かわら版

横浜市立盲学校
点字研究部

文責 道村静江
1999年6月15日発行 NO.18

 今回も、前号と同じく「点字講習会」のときに作成した資料をもとに、「書き方のレイアウト」を特集します。
 これは、表記法でも強く規定されておらず、非常に自由度のあるものです。目的と必要に応じて工夫することができますが、墨字原本を点字化するにあたって、点字の世界のことがよくわかっていないとせっかくの工夫や配慮が、とんでもない見当はずれだったりします。点字使用の人以外は、実際の点字文書を読むことはほとんどないので、正式なものはどういうものなのか、慣習となっているものは何なのかの情報集めも大切だと思いますし、自分が出した点字文書の書き方がそれでいいのかの確認も必要です。その辺の研修を是非にお願いします。
 また、点字使用の先生も、読んで間違っていたりおかしいなと思ったら、是非その人に声をかけてあげてください。それが職員間の点字技術を向上させるもとにもなりますし、生徒への還元にもなっていくのですから。

     【書き方のレイアウト】
1.見出しの書き方
 @見出しのマスあけ
  ・点字は手で触って見出しの序列や数、段落などを探すので、点字用紙の左端をサーッと縦に触ってその箇所を見つけ、その序列を判断します。ですから行頭からどれくらい空いているかがポイントとなります。
  ・見出しは4・6・8マスあけの段階を追ってとりますが、8マスあけとなると1行に入る文字数が少なくなるので、長いタイトルの場合は、6マスあけに落とすこともあります。8マスあけは、一番最初の大きな見出し以外はほとんど使いません。。
  ・段階の違う見出しが多くある場合は、マスあけの差をつけて書くことが難しい。そんなときは同じマスあけレベルの見出しがあってよい。ただし、その時は数字につける記号レベルを必ず変えます
  ・最も小さい見出しは、二マスあけですが、その時は必ず数字や記号を付け、見出しであることを明らかにします。

 A見出しが長いとき
  ・4マスあけ以上の大きな見出しで、1行に入りきらないときは、2行目以降は1行目の書き出しからさらに二マス下げて書き、3行目は、2行目と同じところから書き始めることになります。ただし、大きなタイトル以外の見出しが2行や3行になるようなときや、文として表されているときは、二マスあけの見出しとしてもよい。(記号レベルが変わっていればよい。)
  ・二マスあけの見出しが長いときは、次行の行頭から書きます。ただし、出しと本文の間は必ず行替えをします
  ・試験問題など、大きな問題番号の後に長い問題文が書かれている場合、問題番号だけを4マスあけで書き、行替えして二マスあけで問題本文を書きます。小問は二マスあけでよい。

 B見出し記号
  ・見出しにはよく数字やアルファベットが使われますが、段階の序列として、裸数字(アルファベット)・ピリオド付け・カッコ付け・カギ付けの順となります。裸数字(アルファベット)の後は二マスあけ、ピリオド付けの後は一マスあとします。カッコ・カギ付けの後はもちろん一マスあけです。
  ・数字やアルファベット以外にも、カナの見出しがありますが、その時はのカナは誤読のおそれがあるので使いません。必ず記号を添えます
  ・語句や文だけの番号や記号が付いていない見出しも多くありますが、その時はカギなどをつけて書き表すとよい。
  ・墨字では様々な見出し記号がありますが、それをそのまま対応させてはいけません。必ず点字の序列に置き換えて書き表します。その時に採用する点字記号は必ずしも裸数字から始めなくてもよい。
  ・墨字では項目毎に・(クロポチ)で始まることも多いが、この・(クロポチ)は省略して行替えの二マスあけでよい
  ・墨字で見出し番号のない小項目で始まるものは、小見出し符が有用です。また、強調の星印・米印・アステリスク等が付いて始まるものは、星印を使います。

 C空白行の使い方
  ・最初の大きな見出しの後や大きく内容が変わったり、段落が変わるところなどに使います。空白行を入れることによって、その箇所をはやく探し出すことができます。でも、墨字と同様に使わなければならないというものではなく、状況に応じて適宜使います。空白行を入れたために、最後の1、2行が次頁にはみ出してしまうなどというのはもったいないことです。
  ・しかし、試験問題などでは、検索を容易にするために積極的に空白行が使われます設問と次の設問の間、設問と選択肢の間などは1行あけることを原則とします。入試などの問題量が多い場合には、大きな問題が変わる度に頁替えをします。でも、学校の定期試験などではそこまでする必要はありませんが、頁の最後の数行に問題文がきて次頁に渡ってしまうということは、解答のしやすさという面から避けたいことです。そんなときは最後は空白行にして、次頁から新たに問題文を書いてあげましょう。
  ・文書の終わり、大きな内容の切れ目、試験問題の大問の最後などに、「おしまい」という意味で、空白行の代わりに、行の中程に棒線(ADADの点)の連続線を書く場合もあります。

2.「行替え」と「行移し」の言葉の使い分け
  ・「行替え」は、改行して行頭二マスあけをするときのことを言い、「行移し」は、ひと続きの文章がその行に書ききれないとき、行末で区切って次の行頭から書くことを言います。正しく使いましょう。

3.行末の空きはもっと節約できます。
  ・自動行末処理がついているコンピュータ点訳では、バンバン行移しされていくので紙面の右側がもったいないくらい空くことがあります。そのために行がどんどん増えて、最後の頁では1,2行しかない紙面ができるということにもなりかねません。また、パーキンスなどの手書きでも、入るかなあと思って行末まできたのに、あと少しが入らなかったと悔しい思いをすることがあります。そんなときは次の許容の規則を思い出してください。
  ・本来ひと続きに書き表すべき複合動詞の「する」の前、助詞の前、助動詞のうち「ようだ」・伝聞の「そうだ」・「ごとし」・「らしい」・「みたい」・「です」・「だ」の前で行移しをしてもよい
   また、単位の前、カッコ類や点訳者挿入符開き記号の前、波線や複合語内部のつなぎ符類の後ろなどで、行移しをしてもよい
  ・助詞全部やこれだけの言葉が行移しできるとなると、かなり紙面を活用できます。しかし、あくまでも「本来ひと続きに書き表す語」であることを十分に承知した上での話であって、自分のメモや職員間での文書程度にとどめ、生徒の教材や配布物には避けた方がいいでしょう。でも、カッコ類の開き記号の前、波線やつなぎ符の後ろでの行移しはよく使われていますので、問題なく適用してください。

4.右寄せの書き方
  ・墨字文書で右寄せしてあるような箇所を書くときには、行頭から12マス以上あけて書くとわかりやすい。しかし、1行に書ききれないときは、2行にわたるよりも行頭のマスあけを少なくしてよい。短い名称などは12マス以上あけることもあります
  ・コンピュータ点訳などは行末を右寄せで揃えることも容易にできるので、数行にわたる右寄せ行の文字の書き出しを揃える必要はありません。
  ・年月日などや「職員会議資料」等の資料名なども、そのまま書くと文字数が多くなり、右寄せの意味合いがなくなることから、すべて墨字通りに書くのではなくて、必要に応じて数の略記や「職会資料」のように会議名・部署名・資料名を略して書いてもよい