日本点字事情 かわら版 |
横浜市立盲学校 点字研究部 文責 道村静江 |
1999年6月4日発行 NO.16 | |
先日、新転任者オリエンテーションの3回目を開催しましたが、その中で取り上げる内容は、他の先生方にも聞いていただいた方がよいと思う内容でしたので、全職員向けの講習会としましたが、あいにく会議が重なっていたようで、多くの参加を得られませんでした。 そこで、今回はその時に作った資料をもとに、記号・符号の使い方をより正確に使いこなしていただきたく、特集を組みます。 大多数の職員は、ブレイルスターやベイスで点訳をしていると思いますが、自動点訳ソフトの「エキストラ」を使っている場合もあると思います。点訳の際には、最終的な校正段階で文字の間違いを確認するだけでなく、記号・符号を上手に使いこなし、見出しや書き方のレイアウトにも気を配ってほしいと思います。特に、自動点訳をした際には、墨字文書に使用してある記号がそのまま点字化されても間違った用法となることが度々ありますので、正しい用法や記号とセットのマスあけを十分にチェックしてください。 この書き方や記号・符号の使い方についても、生徒や外部向けの点訳には特に気を配っていただきたいし、教科書などの公的なものとのレベルの差がありすぎてもいけません。そのためにも、職員向けの資料で練習を重ねて、点訳技術の向上を図ってほしいです。また、教科書などがどのように書かれているのかもチェックしてください。 【記号・符号の使い方 その1】 1.ピリオド・感嘆符・疑問符の後のマスあけ ** 句点(。) ** 疑問符(?) ** 感嘆符(!) ・通常の文の最後での使い方では、二マスあけ。 ・見出し番号などの後のピリオド、文中の感嘆符・疑問符の後は一マスあけ。 2.読点・中点の使い方 ** 読点(、) ** 中点(・) ・二つを同時に使うときは、読点は中点よりもやや大きな区切りで使う。 ・重ね数字では読点は使わず、略称の中での中点も使わない。 <日常的な読点・中点の使い方> ・読むときの煩わしさなどから、読点を用いない傾向が長く続いていたが、最近では教科書や印刷物では使われるようになった。今後は使う方向で考えた方がよい。 理由:@使っても使わなくても、使うマス数は二マスになる。 A文の接続関係がよりはっきりする。 B全盲者が墨字ワープロを使うときに、読点の打ち方の感覚がつかめる。 ★読点を使う時の注意(文意や構成をよく考えて、適切に使う。) ・対等な関係にある短い文と文の間、提示された主題の後ろ、倒置法の区切り目、感動や呼びかけ・応答を表す独立語の後ろは、読点を使うか、二マスあける。 ・対等な関係で並ぶ語句の区切り目は読点を使うか、二マスあける。ただし、内部に区切り目を持たない短い語の場合には、一マスあけでもよい。 ・校内的な文書では細かい部分にまで読点を使う必要がないが、上記のような文の大きな切れ目や転換、語句の並列関係などの箇所では、読点を使った方がよい。もし、使わないならば大事な切れ目の箇所では二マスあけにする。 3.囲みの符号(カギ類、カッコ類、指示符類、挿入符類) ・記号だけでなく、必ずマスあけとセットで覚える。 ・囲み符号の内側は必ず続ける。(段落挿入符以外) ・墨字文の形とは必ずしも一致するとは限らない。意味を考えて使用する。 @カギ類 〜 第1カギ 〜 第2カギ 〜 二重カギ ・会話や引用文、強調に使う。 ・第1カギは主に「 」との対応が多い。他に、‘ ’ “ “、下線、傍線、ゴシック体、活字体などにも使うが、あまり使いすぎてもよくない。 ・第1カギと区別して、他のカギを使う場合には第2カギを使用する。この第2カギは、様々な形の墨字のカギの対応となる場合が多い。 ・第1カギの中にもう一つのカギが必要な場合には、ふたえカギを使う。墨字の『 』に大体対応している。 Aカッコ類 〜 第1カッコ 〜 第2カッコ 〜 二重カッコ ・説明や挿入の意味で使う。 ・語句の説明の時は、その語句のすぐ後にマスあけなしで用いる。文が終った句点の後にカッコを使う場合は、二マスあけて用いる(記号の優先順位の意味合いから)。このときは文全体の説明をする意味合いを持つ。 ・語句のすぐ後に続けてカッコを使いたいが、行末に続けられるだけの余裕がない場合はカッコの前で行移しをしてもよい。(それでも直前の語句の説明をしていることになる。)コンピュータなどでは自動行末処理があるので、一続き全部が行移しされてしまい、行末が不自然なくらいあいてしまうことがあります。そんなときはちょっと手間でもカッコから行移しをした方がいいですね。 ・墨字では、〔 〕[ ]{ }〈 〉《 》【 】などの様々なカッコが使われているが、文意から説明であるときには第1カッコを使い、強調であるときは第1カギを使う。2種類のカッコが必要なときには第2カッコを用いる。 B指示符類 〜 第1指示符 〜 第2指示符 〜 第3指示符 ・語句の指定に使う。 ・試験問題などの下線には、第3指示符を使うことが多い。 ・また、検索を容易にするために、指示符使用以外に、次の行を使って下線部の位置に@Cの点を用いた下線を加えることもできる。長文では、指示するページや行を書き加えることもできる。 C点訳者挿入符 〜 点訳者挿入符 ・同音異義語や難しい漢語など、カナ点字で表してしまうと意味がとれにくい場合などには、点訳者挿入符を使ってその語句の説明をすると親切である。 ・図や表はなかなか墨字通りには書き表せないので、特別な形で書き表すことも多い。その説明や、図表の読みとり方を説明するときに使う。 ・使い方はカッコ類と同じである。 D段落挿入符 〜 第1段落挿入符 〜 第2段落挿入符 ・使う場面は少ないが、第一段落挿入符の形は点訳者挿入符の形と同じであるが、この符号の内側は一マス空いている。マスあけも含めて三マスセットの符号として覚える。(他の囲み符号の内側はすべて続けている。) |