日本点字事情
かわら版

横浜市立盲学校
点字研究部

文責 道村静江
1999年5月11日発行 NO.14

   前号に引き続き点字に関する本や道具の紹介PART2

 @校正器(1点打ち)
 これはあると便利。パーキンスで打ち終えたものを見直したときに、「アレー間違えた!」というときにポツッと1点ずつ打って直せるからです。もっとも最近ではこの間違えるのが怖くて、短い文章を1部打つのにもコンピュータが使われます。もっと職員室でパーキンスの音がしてほしいものです。最近では新転任者の方が覚え初めの4,5月ぐらいにしか聞かれなくなったのはさみしいことです。もっと勇気を奮って気軽に手軽にパーキンスで書くようにしましょう。パーキンスの点字のマス間は点字盤よりもコンピュータよりも大きく、点字そのものが大きく感じられ読みやすいということを知っていましたか?
 A点消器
 これもあると便利です。パーキンスで打っているとかなりの頻度で打ち間違いをします。間違いにすぐ気づいて鉄のバーのあるところで大体の人が爪の先でつぶしています。でもこのつぶすという作業は本当はもっと細心の注意を払って行わなければならないものなのです。手書きの点訳ボランティアさんはつぶしたところをノリで補強して、その上から打ち直すという丁寧さです。ですから、爪の先でつぶすにしても、平らになるように十分注意してください。些細なでこぼこでも読む側には敏感に感じとれるものなのです。
 ましてや打ち終えた後に、「アッ、この1点が不用だった!」というときには爪では周囲の点もつぶれてしまいます。ペンの先ではきれいに平らにはなりません。そんなときにこの点消器が活躍します。
 B作図用ルレット(点線・短線)
 こんなものを持っている人はほとんどいないのでは?(数学科の巻山先生ぐらいかな?)今は立体コピーが大活躍しているので、つい墨字の原稿を書き(といっても文字の部分は点字で書き表さなければいけませんが)、マジックで線を書いてしまいます。いい器械ができたものです。
 でも、簡単な図、しかも直線的に表すとき(位置関係を示したり、模式図など)には、このルレットが大変便利です。行にとらわれず線が引けるからです。ルレットって何?と思われる人は、家庭科のチャコペーパーで印を付けるときに使う道具を思い出してもらえれば・・・といっても最近はほとんど使っていないみたいですが。こんな便利なもの、もっと普及させましょう。そして、生徒に簡単な図や位置関係を把握させたいときに、億劫がらずに図を作って触らせてわからせる指導をしましょう。職員も図を作らない、生徒も図を触らない、とくれば触図を理解できない生徒がたくさんいるのは当然のことです。
 他にも作図用1点打ちセットもありますが、これはポツポツと打っていくので手間暇がかかりそうです。
 C墨点字プレート
 立体コピーをするときには必要不可欠のものです。透明のプラスチック板に点字の大きさの穴がズラーッとあいているもので、ペンでその穴に黒丸を書いていきます。視覚的に点字が表現できて、立体コピーにかけるとその黒丸が浮き出るので、点字としても読めます。
 以前は塩ビ板(これも死語になりつつありますね。使った人ありますか?)に製版機で点字を打って、その出っぱりをカッターで苦労して切り取った手作りのものを使用したり、コンピュータの出現で点字を黒丸で墨字プリンターに印字して、それを修正液で消して点字を書いたりしていました。そんな苦労を見かねてか、前司書の石井みどりさんの仲介で横浜の小さな工場が利益なしの好意で作ってくださいました。これは全国の点訳関係者には絶対に必要なものだと痛感するのですが、日点でも取り扱ってくれず、全国には流通していません。本校だけが恩恵にあずかっている貴重な代物です。是非みんなで持ち歩いて全国に広げましょう。

        《 番 外 編 》
 D「点字学習指導の手引き(改訂版)」
     
平成7年 文部省   慶応通信社発行 1738円
 E「視覚障害児のための言語の理解と表現の指導」
     
昭和62年 文部省  慶應義塾大学出版会 1301円
 F「歩行指導の手引き」
     
昭和60年 文部省  慶應義塾大学出版会 発行  777円
 この3冊は、視覚障害者の指導に必要不可欠な点字と言葉と歩行の指導をどのように行ったらよいのかが、詳しく書かれています。
 点字は教師がそれなりに読んで書ければいいさ、歩行は養訓担当者が基礎を教え込んでくれるからそんなに関わらなくてもいいのかも、普通に会話ができているし・・・と、点字が読み書きできて歩行ができる子にはそれ以上の教科的な知識指導が大事と、この基本的分野を深く勉強していない人も多いのかもしれないと思うのですが、いかがでしょうか?
 でも、この3冊の本を読んでみてください。
 これには、なぜ視覚障害者には触察の技能や空間把握、環境認知の徹底した指導が必要なのか、言葉を獲得し目で確かめられない事象の理解を深めるためにはどうしたらよいのか、点字学習や実際の歩行に入る前のレディネスがどんなに大切かなどが書かれています。たとえ言葉が遅くて点字が入りにくい子や単独歩行が困難な重複の生徒にとっても、触察や環境認知ができる能力、表現する能力がないと、周囲の状況がわからず生活していきにくいのです。ですから、盲学校における指導の根底にはこれらへの配慮ある指導姿勢が必要なのです。この姿勢は教材作りや授業や生活場面での声かけなどすべての場面にも当然現れてきます。
 かく言う私も、中普にいたときは基本的なことが出来上がっていた子たちを相手にしていたものだから、この辺の配慮や姿勢が欠けていたように思います。小学部に来て初めてこの教師としての基本姿勢の大切さを知りました。そして、何と不勉強だったかを痛感しています。もう一度初心に返って勉強し直してみようと思い、この当然読むべきだった本を再び手にしました。
 みなさんはもうお読みですか?まだ読んでいない人はぜひ読むべきです。
必ず指導の役に立つはずです。研究図書費で買いましょう!