日本点字事情
かわら版

横浜市立盲学校
点字研究部

文責 道村静江
1999年5月11日発行 NO.13

 新年度がスタートして1ヶ月が経ちました。新体制には慣れましたか?新転任の先生方も少しは様子が分かってきて、余裕が出始めた頃ではないでしょうか。
 この「かわら版」は昨年度に引き続き発行しようと思っています。スタートは、校内の点字指導や点訳に向かうためだけの知識ではなく、広く日本の点字に関する大きな動きを知っていただきたくて、「日本点字事情」などと大げさなタイトルを付けましたが、やはり足元を固めずして大きな話はできないと痛感しました。
 そこで今年度は、盲学校の職員として知っておかなくてはいけないことの地固めを目指して取り組んでいきたいと思います。私自身もこうして書くことによって漠然としたものがより明確になり、そのための勉強もしなくてはいけないので、大きな励みになっています。
 どうか1年間、ご愛読ください。そしてみなさんの点字に関する知識がより豊富になることを願っています。

 さて、今号はまず導入として、点字に関する本や道具の紹介をしたいと思います。斡旋も合わせて行いますので、ご利用ください。

       《点訳のための手引き書》
 @「日本点字表記法1990年版」 日本点字委員会発行<青表紙>
 これは、点字表記の大本になっている本で、1990年に点字制定100周年を記念して、今まで問題となっていたものが整理され、大改訂となりました。これにはなぜこのような表記になっているのかの詳しい解説が載っています。第1編の表記に関する解説はもちろんのこと、第2編の参考資料もその理由が詳しく書かれています。点字を本気でマスターしようと思うなら、この本は必読と言えます。全国の盲学校の職員は当然この本を持っていて、表記の意味を理解していて然るべきなのですが、本校には幸か不幸か「点訳便利帳」があるために、この本まで到達していない人が多いようです。
 A「点訳のてびき」第2版 日本盲人社会福祉協議会点字図書館部会発行
 これは、主に点訳ボランティアが使うために作られた本です。大本の日本点字表記法はあるものの解説が多くて手軽には使いにくいので、解説を簡単にし、例を多く載せることによって使いやすくしたものと言えます。本校の「点訳便利帳」はこれを大いに参考にしています。ですから、これは特に必要はないと思いますが、日盲社協の点字図書館部会が点訳に関する大きなイニシアティブをとっていることは知っておいてください。
 B「最新点字表記辞典(増補改訂版)」<茶表紙>
 点字の表記には最もややこしい「分かち書き」というのがあります。どんなに文法を駆使してきまりを作っても例外はつきものです。ですから、ちょっと分かち書きで迷ったときに調べる辞典としては、点訳作業のそばにあると便利でしょう。でも、基本はあくまでもきまりを理解することですが。

 C「新点訳便利帳」(横浜市立盲学校 発行)
 これは説明の必要のない、みなさんの手元にある点訳のための手引き書です。本校独自の冊子で、改訂に改訂を重ねてきたもので、16年の歴史があります。他校にはない財産だとは思いますが、この冊子が無料配布されるものだから、この1冊に頼ってしまいがちです。編集を担当した者としては内容的には独自性も含んでいて自信はありますが、これはあくまでも「あんちょこ」です。本来なら@とAを自前で購入して点字技術の向上を図るべきなのですから、これに頼りすぎず点字表記の本質のきまりと意味をしっかり勉強していただきたい。そのためにはこの便利帳の他に@とBは持っていてもよいと思います。

      《点字を書くための道具》
 D点字タイプライター
 本校で使われているタイプライターは、「パーキンスブレーラー普通型」でアメリカ製です。輸入物で現在は13万7千円もします。大事に使いましょう。とても頑丈にできていて壊れにくいのですが、持ち運びにはとても不便です。
 その他、「ライトブレーラー」という通称カニタイプと言われるものもありますが、使っている人はほとんど見かけなくなりました。学校にもわずかにありますが、骨董品になりつつあります。これは凹面打ちで点字盤と同じ書き方になり、打つ毎に本体がどんどん移動していきます。一昔前はこれが主流でしたが、四半世紀前頃からパーキンスブレーラーが大活躍し始め、今ではコンピュータが大活躍ですよね。時代の流れを感じます。
 E点字盤と懐中点字器
 点字の導入期が終わると、持ち運びに便利な点字盤が使われます。凹面打ちなので読むときとは逆の書き方を学ばなければいけません。点筆で打つ操作も容易ではなく、相当の練習が必要となります。一般の職員はたぶんこれでは打てないでしょう。パーキンスやコンピュータの凸面書きに慣れているせいで鏡文字になってしまうからです。でも、生徒にとってはこの点字盤の操作は必要不可欠のものとなってきます。職員はうまく打てなくても、指導法はしっかりと学びましょう。
 点字盤は、点字用紙大の盤に2行分の打つための金具(定規)があり、定規を移動させながら打っていきます。両面打ちができるのもいいところです。両面打ちをするために上部の針に紙の止める場所をずらすという工夫がすごいとうなります。初心者の人ぜひ見てください。
 懐中点字器というのはコンパクトな数行分のもので、盤全体が点筆の受け皿になっていて、押さえる枠は点字のマスになっています。片面打ちしかできません。メモ程度の筆記によく使われます。職員は家で葉書を書くときなどにあると便利でしょう。盲学校を離れると書く道具がないので、こういうのを一つ持っていると一生点字と関わっていけるものと思います。ハガキ専用点字器というのもあってハガキの大きさに縦書き・横書きと工夫されているものもあります。
 また、これらの道具には点筆が付き物で、セットで売られています。点筆にもいろいろな種類があり、点字盤には丸型の点筆がついていて、懐中点字器には収納にかさばらない平型の点筆がついています。通常は丸型のものが握りやすく、長時間使用しても疲れにくいので、ほとんどの点字使用者がこれを使用しています。その他に日本点字図書館50周年を記念してオリジナルのとても形のよい木製の握りやすい点筆も売り出されています。
                    <次号に続く>