日本点字事情
かわら版

横浜市立盲学校
点字研究部

文責 道村静江
1999年2月25日発行 NO.12

 いよいよ学年末に突入し、あれこれと山のような仕事に追われておられることと思います。この「かわら版」も今年度の締めくくりとして、何を特集したらよいのだろうと悩んでいて、前号よりずいぶん間があいてしまいました。
 できれば来年度も引き続き書いていきたいと考えています。そして、もう一度初心に戻って、みなさんのお役に立つ情報を流す場として活用していきたいと思っています。つまり、4月から再スタートということになります。となれば、この時期、一体何を書けばいいのでしょう?・・・と悩んでいたら、ある人からこんな情報を得ました。
 「この1年、点字を勉強したいなあと思っていたけど、たいしたことはやれなかった。この1年で盲学校を去らなくてはいけない人のために、これだけは覚えていってほしいということを書いてもらえるとうれしいなあ。」とのことでした。

    「盲学校を去られる方へ」特集号

 それじゃあ、書いてみましょう。うまく伝わればいいけど・・・。
 1.まず、どれくらい点字に親しんでいただけたかのチェックです。
  @五十音は、表を見ないでも指が動くようになりましたか?
  A濁音や拗音などは前置符号がすぐに出てきますか?
  B「 」( ) 。 ? ! などのよく使う記号は、完璧ですか?
   その他、どれくらいの記号を覚えましたか?
  C助詞の「は」「へ」は、「ワ」「エ」と書いていますか?
  D長音符の使い方は間違えていませんか?
  E数字はきちんと書けますか?0〜9まで形がスラスラと出てきますか?
  Fタイトルの書き方はわかりますか?
   行頭はどれくらいマスあけをすればいいのか、感覚はつかめていますか?
  G外国文字の書き表し方は何を前置すればいいのかわかりますか?
   アルファベットはどれくらい覚えたでしょうか?
  H最後に、一番難しい「分かち書き」です。基本的なきまりは理解していま   すか?難しいところは、「便利帳」や「表記辞典」で調べればいいのです。   心配することはありません。
  以上、どれくらいまで技術を上げることができたでしょうか。

 2.誰かに置きみやげとして、簡単なものを点訳してみませんか?
  (この忙しい学年末、そんな暇ないかなあ・・・)
 @〜Fまでがクリアーしていれば、簡単な文章は点訳できますよね。是非簡単な点訳に挑戦してみてください。題材はいくらでもあります。
 ・親しい生徒に、手紙を書く。
 ・生徒の好きな曲の歌詞を点訳してあげる。
 ・短いものであれば、詩や短歌・俳句を点訳してあげる。
 ・童話や絵本でもいいですよね。
 ・春休みの宿題を教科担当の先生に代わって点訳してあげるなんて最高かな?
 完璧な分かち書きができなくてもいいのです。「まだ、勉強中だからごめんね」と先に謝っておけばいいのです。でも、点の打ち間違いだけにはご注意を!

 3.そして、「分かち書き」だけはこれから徐々にお勉強をしてください。
 そのためには、「点訳便利帳」と「表記辞典」があればいいでしょう。まだ、「点訳便利帳」を隅から隅までじっくりと目を通していない人は、是非何か読み物を読むような感覚で読み進めてみてください。国語科ではなくても、国文法に詳しくなくても、日頃私たちが使っている日本語です。言葉のリズムとか、法則性のようなものが何となく見えてきて、まるでパズルを解いていくような楽しさを覚えますよ、きっと・・・。そして、どこに何が書いてあるのかを思い浮かべられるようになれば最高です。(3週間で完全マスターした初心者が実際にいます。要はやる気と集中力です。)
 そして、本当にややこしい部分については、「表記辞典」を引いてください。そうすればきっと完璧に近くなるはずです。「表記辞典」は3,000円でちょっと高いのですが、3月末までに届くようにまとめて注文しましょう。

 4.これから先、使う機会がないと忘れていきますよね。これが一番心配!
 盲学校を離れると、パーキンスもありません。ましてやコンピュータのブレイルスターも使えません。でも、あきらめるのはちょっと早い。「BASE」のソフトがあります。コンピュータをお持ちの方はぜひ「BASEシステム」のフロッピーを1枚持ち帰って、ご自宅のコンピュータにインストールしてください。これで、いつでも点訳はできます。もちろん通常の文書を書くように、ローマ字やカナ入力が可能ですが、「ハ・マ」キーを@Cの点とするキーボードで点字入力が可能です。そして、気が向いたときに点字に触れてください。もしかしたら、点訳ボランティアになってネットワークで活躍するかも。
 だけど、一つ問題点がありますね。自宅には点字プリンターがない!そんなときはいつでも盲学校に顔を見せてくださって、ついでに出力してください。
 コンピュータではなくて、もう一つのいい方法。盲学校関係者には是非点字でお手紙を書いて出してください。そのためには、点字用紙と点字板が必要です。点字板は安い携帯用の懐中定規がありますが、これはなかなかのくせ者で、使いこなすのは初心者にはかなりしんどい。なぜならば、凹面だからです。せっかく覚えた点字も頭を逆さにして考えなくてはいけないから、すぐにいやになります。
点字用紙を手に入れてまで書こうという気には、なかなかなりにくいものです。
 そこで、登場するのが、石井みどりさんが紹介している「点墨プレート」です。
あれは、普通の用紙に鉛筆で黒丸を書いていけばいいのですから。700円ですので是非購入してからサヨナラしてください。これで、盲学校の晴眼者の人にバンバン点字でお便りしてください。逆に職員の方が読むのにアタフタしたりなんかして・・・。(職員にもいい発憤材料になります。)
 でも、もし可能なら、全盲の生徒には懐中定規を使って葉書に点字を打って年賀状やお手紙を出してあげてください。お願いします。

 5.最後に、どこに行かれても、盲学校の職員だったことを生かして、点字のことや視覚障害者の生活について、理解を深めていただけるようなお話をどんどんしてあげてください。きっと盲学校の職員でいる人たちより、ずっと社会への啓蒙活動ができるチャンスが多くあるはずですから。

 以上、盲学校の職員だったこと、点字に触れたことによって、これから先、なにがしかのご縁が続くことを願っています。 
 今回は、盲学校を去られる方に焦点を当てて特集しましたが、現職の方でも、生徒の学習上、点字に触れておられない方もたくさんいると思います。今一度、ご自分の点字技術をチェックなさって、ある期間集中して点字に触れてください。そうすればすぐに指が動くようになります。分かち書きの感覚がつかめるようになります。盲学校の職員である以上、必ず点字を書かなければならない場面があるのですから。
 4月以降、このレベルを基本において、徐々にレベルアップしていきます。
1年間、難しい内容でしたが、読み進めてくださって、ありがとうございました。