日本点字事情
かわら版

横浜市立盲学校
点字研究部

文責 道村静江
1999年1月11日発行 NO.10

      新年あけましておめでとうございます。
 視覚障害教育の発信基地として、本校の教育が益々発展することを願って、
今年もがんばりましょう!

 さて、年も改まり、この「かわら版」も昨年の難しい内容から衣替えして、盲学校職員なら身につけておきたい点字知識を中心に編集していきたいと思いますので、どうか継続してお読みください。

 今回は、今までなかったのが不思議なくらい簡単な内容に取り組んでみたいと思います。というのは、学校にたくさんの人が見学や研修に来たりしますよね。そのときの点字研修を初心者に行うのに、すべて口頭の説明でした。いきなり「点訳便利帳」を見せても難しすぎる。1時間ぐらいで点字の概要がわかり、簡単なものがかけるようになるために、初歩的な説明がすっきりと1枚にまとまったものがあってもよかったのではと思います。
 個人的に、12月に港北小学校の3年生の児童を相手に点字講習会をする機会がありました。そのときに、子供たちにもわかるような簡単な説明書を作ってみました。専門用語・文法は一切抜きにしてみたら、これは他の研修にも使える!と思いました。
 たとえば、点字というと六つの点で表されている一マスが一文字だと思われがちですが、63通りの中にすべての文字を書くことは出来ない。だから二マスを使って書く文字もたくさんあること。そのときには、「次はこんな字が来ますよ」という記号を前置しているのだということ。また、耳で聞いたとおりに書き表すので「は」「へ」の書き方が違ってくることや長音符を使う文字があること。でも、何でも耳で聞いたとおりではないんだよという注意書きも合わせて。そして、分かち書きがあること。でも、これは難しくは書けない。「言葉のまとまりごとに書くんだよ」と教えてあげる。初心者にはこれぐらいで十分。ただし、行末は言葉を区切ってはダメということはしっかり教えておく。そして、最後に点字には消しゴムがありません。と締めくくれば、初心者でもだいたいのものは少々間違っても興味を持って書いてくれるのではないでしょうか。

 この「かわら版」には、紙面の都合上、2号にわたって書きますが、「点字の書き表し方」をB4版1枚にまとめたものがあります。小学生用に簡単な言い回しや小学生が読める漢字を使ったものと、大人用のものを二部用意してあります。 また、必要最低限の点字記号・符号を凸面・凹面で示したB4一枚ものの一覧表も作りました。初心者に「点字ってこういうものよ」と説明するときにセットでお使いください。
 これで、盲学校の職員なら誰でも簡単な点字講習が出来ますね。原本は道村が持っていますので、気軽に声をかけてください 

点字の書き表し方
(はじめて点字を読み書きする人のために)<小学生用>
 

 点字を書くときには、いろいろなきまりがあります。そのきまりの中からかんたんなものをしょうかいしてみます。このきまりと点字記号表があれば、かんたんな文は読んだり書いたりすることができます。チャレンジしてみてください。
 

 1点字は6つの点で作られた1マスで一つの文字を表します。でも、63通 りの文字しか作れないので、にごる音(ガギグゲゴ)などのたくさんの文字が、 2マスで一つの文字を表すことになります。
  そのときには、あてはまる文字の前に「次はにごりますよ」などということ を知らせる点字記号を書きます。なぜなら、点字は左から右に一マスずつ読んでいくので、さいしょにそういうお知らせがほしいのです。

 2.点字は字の大きさを変えることができないので、すみ字(みなさんが使っている字)のような小さな「ゃ、ゅ、ょ」や小さな「っ」を書くことができませ ん。そこで、よう音の「きゃ、きゅ、きょ」や「しゃ、しゅ、しょ」などは、「か、く、こ」「さ、す、そ」が変化したものなので、その音の前に「次はよう音ですよ」というの記号の点字をつけて、2マスで表すことにしています。
  また、つまる音には、つまる記号の促音符(そくおんふ)を使って書き ます。
  (例) がこー(学校) きて(切手) しゅぱつ(出発)

 3.点字は基本的に耳で聞いたとおりに書き表します。ですから、すみ字で書くのとはちがう、次のようなきまりが生まれてきます。

 (1)点字にはひらがなとカタカナの区別はありません。もちろん、漢字もありません。全部かな文字で書き表します

 (2)言葉のあとにつける「を」はそのまま「を」を使いますが、「は」「へ」  は、発音どおりに「わ」「え」と書きます
   (例) 私→わたし  本屋→ほんや

 (3)のばす音で、すみ字で「う」と書くところは、のばす記号の長音符を書きます。
   (例) くーき(空気)  おとーさん(お父さん)  いもーと(妹)
      とーきょー(東京)  おーさま(王様)  おとーと(弟)
      うんどーしよー(運動しよう) きのーのよーに(きのうのように)

 (4)のばすように聞こえる音でも、「あ」「い」「え」「お」は、すみ字と同じように書きます
   (例) おかさん(お母さん)  おばさん  おじさん 
      おにさん(お兄さん)  せんせ(先生)  とけ(時計)
      せと(生徒)   おねさん(お姉さん)  おきい(大きい)
      おおい(多い)  とる(通る)  とい(遠い)

 4.数字やアルファベットの書き方
  数字には、ア行とラ行の10文字が使われています。ですから、かなと数字を区別しなければいけません。そこで、書きたい数字の前に、「今から数字がはじまりますよ」と知らせる数符 を書き、そのあとに数字を書いていきます。数字が終わっても、そのままかな文字を続けることはできますが、ア行とラ行の文字があとに続く場合には、数字とかなを区別するために、その間に第1つなぎ符 を入れます。
   (例)12がつ(12月) 24か(24日) 9さい(9才)
      <第1つなぎ符を入れる場合>10えんれつ 
  ただし、日付の1日(ついたち)〜10日(とおか)、20日(はつか)はかならず発音どおりにかなで書きます。
  アルファベットは、「今からアルファベットを書きます」と知らせる外字符を書いてからあてはまるアルファベットを書いていきます。ただし、これ だけではすべて小文字を表していることになりますので、大文字を書きたい場合には、外字符のあとにさらに大文字符をつけます。
   (例) cm kg  5(B5)

 5.ことばの音を表す点字記号の他にも、いろいろな記号が用意されています。よく使うものでは、句点(。)、疑問符(?)、感嘆符(!)、第1カギ「 」、第1カッコ( )などがあります。(点字記号表の『記号・符号』を見てください。*印は点字が書かれていることを表し、□はマスあけを表しています。)

 6.点字を書くときには、ことばのまとまりごとにマスあけをしなければいけません。そうしないとことばがつながって、意味がわかりにくくなるからです。マスあけはことばのまとまりごとに細かく切って一マスずつあけます。文と文の間は二マスあけます。
  また、最初の文の書きはじめる前は行のはじめを二マスあけて、だんらくを変えるときには行変えをして、行のはじめを二マスあけます。(作文を書くときに一マス下げて書く書き方と同じですが、点字の場合は一マスではなくて二マスあけます。)
  (例) □□この□あいだ□わたしたちわ□もーがっこーえ□けんがくに□□
     いきました。□□その□ときに□てんじの□ことを□すこし□□□□
     おしえて□もらいました。□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
     □□てんじわ□よく□くふーされた□もじだと□おもいました。□□

 7.点字はまとまったことばのと中で区切って書くことはしません。ですから、行のさいごにことばが入らなくなったからといって、ことばのと中で次の行にいってはいけません。書きたいひとまとまりのことばがその行に入らないと思ったら、そのことばから次の行に書きます。行のさいごの方のあき方がいろいろでもかまわないのです。(6.の例を見てください。)

 8.点字には消しゴムはありません。まちがえたらていねいにその点を指先でつぶしてください。紙がやぶれないように、指でさわってもわからないくらいにていねいにつぶしてから、またその上から正しい点字を打っていきます。
  点字を書くときに、何度か点字板から紙をはずしたりしますが、またセットするときには、点字用紙を固定するツメのところにあいた穴を合わせて、ずれないようにさしこみます。行がずれないようにするためです