「視覚障害者の漢字学習」の指導法と実践事例
             
漢字学習支援グループ 道村静江
1.漢字教育の必要性

 今更取り立てて言うまでもない議論です。仮名だけで表されている点字使用者には漢字の指導はあまり必要ではないと長い間考えられてきて、積極的な取り組みが行われていなかった経緯があります。しかし、同音異義語が多い日本語の特性から言葉の意味の理解を助ける意味でその必要性が強調されることはありましたが、具体的にどのような指導がよいのかの示唆がないために、具体的な取り組みが少なかったことも事実です。
 近年のコンピュータ機器のめざましい進歩に伴って視覚障害者にとってなくてはならないものとなってきました。その活用のために漢字を使いこなす(適切な漢字選択をする)知識が必要となり、漢字を知りたいという欲求が高まってきているのは、関係者なら誰でもうなずけるところです。
 学校教育の中で、漢字教育を受けずに大人になった人たちの中には、様々な言葉にどのような漢字が使われているのかを独学、あるいは日常生活の中で言葉感覚を磨き、音読み熟語を理解して漢字選択がそれなりにできるようになってきた人も多くいます。そのようにして自らクリアーできた人は別にして、未だに漢字のバリアに手こずっている人が多くいます。
 数多い漢字を系統的にその特性と意味を理解しながら学習を積み上げていくことは、学校教育の中でこそできることですが、残念ながらそのための適切な教材がありませんでした。
 一時期、AOKワープロソフトが盛んに使われるようになていた平成4,5年頃、小学校で習う教育漢字すべてを音訓読みと語例で示した教材を作り指導した経験を持ちますが、それはひたすら暗記によるもので単調かつ興味付けの薄い学習となってしまいました。
 その反省から、漢字教育には字形を提示して、漢字そのものが持つ特性とおもしろさと深い意味を理解させながら進めたいと強く思うようになりました。しかし、字形を触図で提示できる手段が見つからず、実現には程遠いものでした。
 そして、この度、「点図くん」というスキャナーやフォントからデータを取り込み加工できるソフトの出現で、この教材作りが可能となり、かねてからの念願であった点字使用者にも漢字教育を具体的に指導できる資料が整ったわけです。
 そして、色の付いたUV点字や墨字が併記できる印刷方法で、学年毎に冊子を出版し、晴眼者と同じデータを共有して、サポートを受けながら学習できる教材が完成しました。

2.指導計画
 
(1) 初めはカタカナの導入から
 漢字の指導を始める前に、点字で書かれている仮名にはひらがなとカタカナの2種類があることを知らせます。晴眼者はひらがなから入るのが一般的ですが、ひらがなの特徴は曲線なので、直線構成になっているカタカナの方が全盲者にとってはわかりやすく、しかも、これから目指す漢字の構成は直線構成と様々な部分でカタカナの要素が入っているので、カタカナを十分に指導し、書けるようになるまでしておくと漢字学習の時に便利です。
 ひらがなは余力のある人には説明して触読させて理解させてもいいですが、それを書き表せるようになるのには時間がかかりそうです。ただ、単純な字形のものは書けるとよいかもしれません。
 漢字教育からははずれますが、数字やアルファベットの字形の理解も適当な時期に指導してあげると、生活場面や日常会話の中で出てくる知識に活用できる場面もあります。

 
(2) ペンを持って書けることもそれなりに必要
 先天盲の場合、ペンを持って文字を書いた経験がなく、ペンの持ち方、手や指先の動かし方が上手にできない場合がほとんどです。特に正しいペンの持ち方を教えてあげた後に腕全体を動かすのではなく、指先だけのコントロールで縦線、横線、斜め線、カーブ線を書けるようにすることは漢字学習のためだけでなく、図形学習の場面などにも必要となる技能です。
 書くための用具は、レーズライターを使用し、後半の漢字を書くようになるときには四角いマス目があると便利です。
 ペンで書くときには、各線の始点の場所を確認することがまず必要で、その後、どの方向に指を動かすのか、真横に書いているつもりでも斜め右下がりになったり、縦に書いているつもりでも斜めになったりと方向の基本線がしっかりコントロールして書けるようになることが大切です。触図によって線の構成と長さや方向を理解し、だいたいの形をまねて書けるようにするためにはカタカナを書いて覚える学習は適切です。

 
(3) 書き順
 墨字の筆順にこだわる必要はありません。だいたい字の左上から右下に書いていくことがわかっていれば,あとは全盲者特有の確認しやすい書き順があります。突き出さないところや線が閉じるところなどは,明らかに墨字の書き順と違った方法の方が正確に書ける場合が多いです。
 例えば「エ」「土」等は通常の筆順通りに書くと縦棒の後の横棒がうまく交わりません。横二本線を書いてから下の横棒にぶつかるまで縦棒をのばせばよいのです。「上」等も同様に前に書いた線に接するように次の線を書くのは大変なことです。それよりも下の横棒、縦棒、上の横棒と書いたり、「金」なども屋根の三角を書いたら三本の横棒を書いて中央に上下を突き出さないように縦棒を書き、最後に点点を中央線に寄せるように書きます。このような独特の書き順の方が書きやすく、形もきれいに整います。また、「日」などのような閉じたものも難しく、下棒の閉じを右から左に向かって逆に書く方法も考えられますし、目指す場所を片方の手で確認しておいてそれを目指すやり方もありますが、右利きの人は難しいです。
 いずれにしても、1年生の初期の単純な漢字で指で探りながら書くための工夫した方法を一緒に探ってあげて、自分なりの確認しやすい、形が整いやすい方法を見つけると、その後の漢字は自ら工夫して書けるようになります。

 
(4) 漢字を書けるようにすることが目的ではない
 漢字を書けるようになるためには、かなりの時間をかけての指導が必要となります。
特に整った字を書かせようとするのにはどうしても無理があります。書く指導の目的は、触察だけの理解よりも、書くことによって字体をよりはっきりイメージできるところにあります。また、晴眼者と同じように書ける喜びを味わったり、近しい人に墨字を書いて驚かせたり、簡単なメッセージを送ることもできます。また、自分の名前は書けるようになると何かと便利です。
 また、低学年の基本的な字が書けて、字形をしっかり把握することによって高学年の複雑な漢字になったときに、それらの組み合わせで容易に理解できますし、基本形の組み合わせで画数の多い字も書けるようになる場合もあります。しかし、あくまでも字形をイメージできるための手段であって、きれいな墨字文字を書くための指導ではないことを認識しておきたいものです。

 
(5) 漢字指導の最終目的は漢字選択が正確にできること
 最終的に大切になることは音訓の読み方の理解です。音でしか言葉を理解していない、仮名でしか書き表せない点字の内容を理解するためには、その言葉が持つ意味を知らなくてはいけません。訓読みは和語ですから単独で聞いただけで理解し易いですが、音読みは同音異義語が多数あり、音からの判断だけでは難しいものです。日本語は漢字文化ですから、どのような漢字がどの場面で使われているかがわかって初めて音読み熟語の言葉が理解できるのです。
 そのための学習として、音読みだけ暗記するのではなく、数ある同音の漢字の持つ意味を理解したり、漢字同士を関連づけることが必要で、その学習には部首や旁の構成がわかる字形の提示が不可欠になってきます。
 この学習によって、音読み熟語などへの意味の理解が深まり、どういう漢字が使われているのかを興味を持って学習するようになり、ワープロソフトを使い出したときに適切な漢字選択ができるようになります。

3.具体的な指導方法
 (1) 字体を触察する

 カタカナを理解したら、1年生の画数の少ない基本的な漢字は、カタカナ構成から形を探っていく。例えば、「日」はカタカナの「ロ」に真ん中1本。「名」は「タ、ロ」。「左」は「ナ、エ」。「空」は「ウ、ル、エ」。「竹」は「ケ」が二つ。「四」は「ロ、ル」などカタカナを理解していることによっておもしろいように組み合わせていくことができます。カタカナで説明がつかないような「木」は「横、縦、左斜め、右斜め」と線で分解し、始点や交点の確認をしっかりさせます。
 次第に覚えた字が増えてきたら、カタカナ構成から離れて、既習の漢字との組み合わせで理解していきます。「車」は「一、日、一に突きだした縦棒」。「男」は「田んぼに力」。
「天」は「大の上に横棒」。「早」は「日に十」などのように、どんどん組み合わせができるようになります。単純にはいかないような「糸」などは「ひらがなのく、カタカナのム、漢字の小」などといろいろなものを出してみます。また、部首が出てきたら部首名も教えます。「休」は「にんべんに木」。「見」は「目にひとあし」。「文」は「なべぶたにバッテン」。「草」は「くさかんむりに早い」。「花」は「くさかんむりにイ、ヒ(化けるは後で出てくるので現時点ではイヒと教えてもよいが、先取りで説明しても理解してくれる場合もあります)」
 このように、どんどん既習の漢字が組み合わさってきて、字体を触ったときにどのような形の構成でできているのかを自ら探ろうとする意欲が湧いてきます。中には説明のつかないようなものが出てきたときには、適当に意味づけて作ってみるのも楽しいことです。「楽」は「白にネコのひげで、その下に木」など実におもしろい表現が出てきたりもします。
 この字の形の学習は、冊子の解説の「字形」に載っていて、1年生から順に学習を積み上げていく方法を採っています。高学年の画数の多い複雑な漢字でも、部品の組み合わせで容易に理解できるようになります。

 
(2) 漢字の成り立ちや表そうとしている意味を部首の構成などから知る
 漢字の形だけをゲーム感覚で組み合わせていくのも楽しいですが、せっかくなら漢字の成り立ちや作られた意味を知れば、ますます納得がいきます。「休」は「にんべんは人を表し、木のそばの木陰で休んでいる」。「家」は「ウかんむりは建物を表し、その中に豚を飼っていた。後に人が住む家を表すようになった」。「秋」は「のぎへんは稲の穂が実った様子をあらわし、それを取り入れて火や日光で乾かす様子を示しているので、季節の秋の意味になった」。「高」は「なべぶたに口、どうがまえに口」と分解された字形の説明になりますが、成り立ちの説明は「二階建ての建物を表している。昔は二階建てが高い建物だった」。「合」は「屋根の形に一、口」と分解されますが、成り立ちの説明は「おわんにふたをかぶせ、みとふたがぴったり合った様子を表している」などと説明すると、漢字の持つ意味、作られた意味、そしてどのような言葉に当てはめてよいのかをよく理解してくれます。
 「字の持つ意味」「成り立ち」は解説に書かれていますので、それで学習してください。中には物の形から生まれた字形や旧字体から変化したようなものもあり、点字使用者には理解しにくいものですが、それを全て文章で説明してあります。また、指導者の工夫で、臨機応変に独自の視覚に訴えないこじつけを考え出すことも楽しいものです。晴眼者でも知らなかったような部首名や成り立ちを知ったり考えたりする学習は、漢字の奥の深さとすばらしさを共感し、晴眼者に負けないような知識の深さが身に付くものと思われます。

 
(3) どのような漢字なのかを的確に表現する力を付ける
 全盲者は他人にどのような漢字なのかを伝えるときに、書いて示すことはできません。その代わり上記(2)のような学習を通して、単独の文字を伝える場合には部首や旁の構成を言葉で表現して伝えることができるようになります。また、熟語を示す場合には、その漢字が使われている代表的な熟語や訓読みを言うことでも伝えることができます。逆に教えてもらうときにも、そのような説明があれば、漢字を思い浮かべることができます。
 そのためには、字形の説明だけでなく、点字解説文の1行目(PCトーカー)と2行目(XPリーダー)に表されているコンピュータの詳細読みを活用することが有効です。
 これを言えば、その漢字を特定でき、漢字のタイトルとも言えるものです。他人に説明する時でもこの言い方で十分です。例えば、「出場」は「出発のシュツに場所のバ」。「方向」は「方角のホウに向く」。「売買」は「うる・商売のバイに、買うのバイ」などと言葉の組み合わせで的確に表現できるようになります。

 
(4) 代表的な読み方の他の音訓読みや語例も理解する
 通常の小学校の授業では一つずつの読み方が何回も飛び飛びに出てきますが、点字の資料ではそのような構成にはできないので、新出漢字のところでその読み方すべてを載せてあります。一つの漢字のところでいろいろな読み方を知るようにするとよいでしょう。すぐに理解するのが無理であれば、訓読み、音読み各一つずつぐらいは覚えて、その他の読み方はまた戻って復習するようにするとよいでしょう。
 特に、音読みを覚えることはとても大切です。漢字の字体を知り、その持つ意味を理解する学習を進めれば、同音異義語の漢字選択のときに威力を発揮するでしょう。
 と同時に、多くの語例を知っておくことが必要です。点字解説文には各読み方の後に語例をできるだけ多く載せてあります。本来なら短文で示せば意図している漢字も思い浮かぶのでしょうが、紙面の都合上、語例をできるだけ多く載せたかったために、単語だけの羅列になってしまいました。これだけでは何を意味している言葉なのか理解しにくいと思いますので、指導者や家族、友人たちに教えてもらうことが必要になります。
 この資料の語例は、小学部の学齢児童だけでなく、もっと多くの視覚障害者の方に使ってもらうことを念頭に置いて作ったものなので、小学校段階で使う言葉、日常生活の中でよく使われる言葉、大人になってよく耳にする言葉などを紙面の許す限り列記しました。
該当学齢児童に使う場合には取捨選択したり、個々に合った解説資料に書き換えるとよいかもしれません。でも、今はわからなくても大きくなったときに、多くの語例があることは参考になることだと思います。

 
(5) 6点漢字・漢点字(8点漢字)資料について
 現在の学校教育では6点・8点の漢字教育はなされていません。しかし,先人が考案された漢字を表す点字が存在すること,その有用性も一部で叫ばれていることなどから,情報提供だけはしておこうと思いました。
 でも、特殊な文字ですから、学習者の能力と意欲を十分に見極めた上で提供しなければなりません。将来興味を持ったときやさらに学習意欲が湧いたときの自学自習の課題に任せてよいと思っています。部首や旁からなる漢点字(8点漢字)は漢字の字体の学習で、音訓構成からなる6点漢字は音訓の学習で学ぶことが可能ですので、全く関連性がないことではありません。そういう特殊点字の存在だけは知らせてあげるとよいでしょう。また、指導者に余力があればその方面の知識を得てきっかけを与えてあげるのもよいでしょう。

 
(6) 復習の方法
 漢字を習ったときは理解したつもりでも、日常的に使っていないのでどうしても忘れがちになります。ダウンロードできるデータを活用して、解説文の入っていない字体だけのファイルを印刷し、台紙を貼ってカードを作ることにより、カードをアトランダムに触り、何という字かを当てるというゲーム感覚で復習を行えます。その時の漢字の説明はコンピュータの詳細読みを引用するのが適当かと思います。また、逆にコンピュータの詳細読みを言って、漢字の構成を言葉で説明させることも定期的に行うとよいでしょう。
 その他、学習のいろいろな場面で出てきた言葉にどんな漢字が使われているのかを問うたりします。語例の中で、既習の漢字で書けるものはどのような漢字が当てはまるのかの説明書きを自学自習でやることもできるでしょう。
 いずれにせよ、晴眼者と違って日常的に漢字に接しているわけではないので、忘れることの方が多いので、低学年の基本的な字は繰り返し復習が必要ですが、高学年になれば、音訓読みの理解とどの漢字が当てはまるのかの同音異義語の理解に力点を置けばよいと思われます。

 
4.実際に指導してみての効果
 
(1) 実際に指導を行った小学部低学年対象児童2名は,一般小学生と同じようにペンを持って文字を書けることの喜びを顕わにし,形はいびつであるがカタカナや漢字でメッセージを書いてみたり,知っている人の名前を書いてみたりして,点字を知らない人との交流にも役立ちました。点字の他に普通文字を知ることの喜びと書ける自信が漢字学習への取り組みを非常に意欲的にさせました。
 
(2) 漢字の字形と意味との関係の理解においては,今まで言葉だけの説明文で理解していたのとは違い,字形を確認することによって漢字の成り立ちのイメージや漢字の構成などにも興味を持ち,理解が深まりました。また,カタカナの組み合わせから簡単な漢字の構成を,簡単な漢字から複雑な漢字の構成をどんどん組み立てていくことができ,漢字の構成の確認と理解が速くなりました。中学年以上になると、画数の多い字が出てきてもその構成が十分にわかり、書くこともできます。また、部首や旁の組み合わせから意味を想像できるようにもなります。
 
(3) 音訓読みの学習によって,今まで音でしかとらえていなかった言葉を漢字の組み合わせでとらえ,その漢語の意味をよりはっきりと理解できるようになりました。語例以外の言葉でもその意味から使われている漢字を予測できる感覚が養われつつあり,コンピュータ活用時の漢字選択にもつながる学習です。
 (4) 6点漢字や漢点字の解説はしなくても興味を持って触り,6点漢字では2,3マス目の点字と音訓の読み方とを照らし合わせてその漢字を言い当てることもできました。また,漢点字は漢字の始点である0の点と終点である7の点だけの解説をしたら,下の六つの点から部首の構成などを推測することもありました。
 
(5)字体を触って学習すると、当然書きたくなります。自学自習で書きを進んでやり,始点や交点の場所・線の長さなどを見本を見ながら練習し,画数の多いものでも3cm角のマス目にバランスよく読める字で書けるようになり,全盲児が書いたとは思えないほどの出来映えでした。
 
(6) 最初の30字ぐらいをていねいに指導したら,あとは字体を読みとる触察技能を身に付け,書くコツをつかみ,自学自習でどんどん進められるようになりました。
 
(7)漢字だけを切り取り,カードにしてゲーム感覚で楽しく学習することができました。
 
(8) 今まで意味をはっきりとは理解せずに、音から入った言葉を無頓着に使っていた言葉にとても敏感になり、日常の言葉への興味付けができました。
 
(9)漢字学習以外の効果として,点図を注意深く触察し,線の形や位置の把握,部分から全体構成へとイメージをつかむ訓練が絶えず行われている学習内容であるので,盲児童生徒にとって苦手分野である点図の触察能力の向上に役立っているという意外な効果もありました。

5.最後に
 小学1年から学習を積み上げてきた児童が6年生になりました。1006字の教育用漢字を全てマスターし、その漢字力はすばらしいものです。日常的に使うことの少ない漢字ですが、点字の文章を読み進める時に、どのような言葉かが漢字を意識することで、意味の理解も深まっています。また数多くある同音異義語を適切な漢字で選択できるようになってきました。高学年になり、情報教育の中でPCを使用し、漢字仮名交じり文を書いていますが、漢字選択の力はすばらしいものです。
 また、弱視児と一緒に学習する中で、弱視児が書けなくて困っている漢字を部品の構成で見事に説明し、指導者になってくれています。
 全盲の児童がここまで漢字の知識を持ち、漢字を説明できる力はすばらしいものだと、日々感動しながら学習を進めています。低学年の頃、このような漢字の指導がどのようにつながっていくのか漠然としたイメージしかありませんでしたが、実際に6年間の学習の継続と積み重ねは、すばらしい効果を上げていると実感しています。
 このような学習を全国の視覚障害者にもぜひ実感してもらいたいと願っています。
 今、教育用漢字を一通り終えた彼らは、応用学習として「同じ音を持つ漢字」「同じ旁を持つ漢字」を探し出し、漢字同士を関連させたり、漢字の持つ意味から選択の幅と応用力を高める学習に入っています。
 今後は、日常的に使うことの少ない漢字であっても、意識して漢字学習に取り組むことで、晴眼者と同等の力を付け、墨字文字の処理を行える技能を身につけ、社会参加への足がかりとしていってくれることでしょう。